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「俺はそう言うやりとりは嫌いだっつって、何度も何度も言ったよな?」  ミロクよりも小柄な陛下はよろけてソファーに手を突き、困ったように眉を八の字にして肩を竦める。 「これが貴族の会話の様式美なんだよ」 「うるせぇ俺の前ですんな」 「はー……」  気が逸れたのか、陛下のこちらを圧倒してくるような気配が消えて、ミロクに押されるがままにぐらぐらと頭を揺らす。 「ところで、クラド。はるひにはきちんとこの話をしたんだろうね」 「は?」  思わず漏れた言葉はどうしてそんなことを問い返されたのか、純粋にわからないことに対してつい漏れた声と言う風だ。  どうして説明する必要があるのか と言う感情の見え隠れするそれに、あまりいい気分ではなくてきゅっと唇を引き結ぶ。  それを見て、陛下が「はぁ」と溜め息を吐いた。 「はるひはずいぶんと、かすがが過保護に育てていたな。先程からの会話が良くはわかってないのではないか?」  穏やかそうに見えて、人をからかう表情を見え隠れさせる顔で問いかけてくる陛下に、オレは気まずく頷いた。  正直、クラド達が何を話しているのかさっぱりだ。 「……はい。申し訳ございません」 「いや、かすがの過保護っぷりはいつかこんな問題を起こすのではと思っていた。クラド、はるひはバトラクスを興す理由を知らないようだ」 「えっ  ────し、しかし、私でも知るような事柄です!」  思わず立ち上がったクラドに驚いたのか、ヒロがびくりと体を震わせて「うぅ 」と小さく呻き声を零す。 「俺があやす。お前らは小難しい話でもしてろ」  ミロクはそう言うと立ち上がり、ロニフが傍に立つ扉を抜けて出てさっさとヒロと散歩に行ってしまって……  出て行った扉を名残惜し気に見遣りながら、陛下はまたぱしんと尾を鳴らした。 「疎いなりに理解しているのなら、お前も出て行きなさい。折角来たんだからロニフに稽古をつけて貰うといい」  視界の端のロニフが頭を下げるのが見えて……  クラドの尾が完全に足の間に入ったのが見えた。   ◆  ◆  ◆  絞首台の十三階段を上る気持ちを感じながら緩やかな丘の上へと案内される。  来た道を振り返れば前王が住むにはあまりにも貧相な屋敷が見え、応接間の窓からはるひが心配そうにこちらを見ていることがわかった。

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