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「お前はかすがの召喚に巻き込まれた只人だったな」  「おまけ」の言葉をぐっと飲み込みながら頷くと、陛下はふぅと気だるげに溜息を吐きながら姿勢を崩した。  大きなソファーにゆったりと座っている姿は王にそっくりで、体格は全く似ていないのに醸し出す雰囲気は同じものだった。 「只人では子を成せない、だが王族の義務がある以上お前を娶るのならば側室を迎え入れなくてはならない」 「え  っそれは、 っ」  ぐっと唇を噛み締めたせいで厳しい顔つきになったのを隠すために慌てて顔を伏せる。  ここがオレの元居た世界とはまったく習慣の違う世界なのだと言うことは良くわかってはいるけれど、産まれた時から一夫一妻の意識のあるオレにとってはそれはとても特異なことに思えて仕方がなかったし、クラドの伴侶と言う立場を得たからかその可能性があったと言われただけでももやりとしたものが胸を満たした。 「だからその義務を放棄するためにクラドは褒美にバトラクスを興すことを望んだのだ、そうすればそんな風にお前に苦い顔をさせる必要はないからな。一代限りの身分において跡継ぎ云々などただの笑い話だ」  険しい顔を見られてしまっていたのかと恥ずかしくなって肩を竦めるも、正面に座っているのだからそんなことでは誤魔化すことはできなかっただろう。  オレの悪足掻きを笑うように、陛下の片眉が微かに上がる。 「むしろ王籍を抜けたのならば子がいない方が騒動が起きなくて済む  はずだった」 「  っ、ヒロですか」 「子を産めないはずのお前が子を成し、クラドの王籍はすでに抜け、挙句生まれた子は神の似姿を持って生まれてしまった」  その物言いはヒロの存在を良くないものと言われているようで、居心地の悪さに膝の上の手に更に力を込める。そうするといつの間にか汗でぐっしょりと濡れていて、自分自身が限界まで緊張していることにやっと気がついた。 「我々の名は最初に自らの名を、次に王族ならば受ける洗礼名を、そして王の子ならば母の名、そして最後に王族として権利があると知らしめるために国名のシルルを入れる」 「では   」  一つ一つヒロに当てはめていくと、どんどんと心細くなって…… 「王籍から外れたクラドにシルルの名は使えない、そして王の子でもないのだから母の名も、王族でないのだから洗礼名も受けることができない。ヒロにはその名以外に負えるものが何もないのだ」 「…………わ 私も、はるひと言う名前だけです」 「お前は貴族でもなければ王族でもなかろう」  ばっさりと切られ、口を閉じるしかなかった。  かすが兄さんのように誰もが知るような肩書きもなく、クラドのように王族に連なるわけでもない、ロカシのように代々受け継ぐ名もない。

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