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 ヒロが産まれて、クラドと結ばれることができて、もうそれだけでこれから先も幸せに生きて行けるのだと思い込んでいたけれど……  不安に苛まれて、つい正面の陛下から視線を逸らしてクラド達が見える窓の方へと視線を投げると、黄緑の草原の中に深い紫のドレスがはっきりと見えて思わず目をすがめて見入ってしまう。  稽古と陛下は言っていたけれど、親子水入らずで話す機会を設けるために言ったんだなって二人の距離を見ながら思った。  数日前からそわそわと落ち着かない雰囲気があったから、クラドもああやって母親であるロニフと会えるのを楽しみにしていたんだと思う。  特にロニフの態度を見ていると、自分の子供に接していると言う感じはしなくて……  それが立場のせいなのか、長く会えなかったためなのかオレにははっきり分からなかった。  今、向こうの世界に戻されたら親とはあんなふうに余所余所しくなってしまうのかな?  そんなことを考えていると、クラドとそっくりの黒い尾が風に靡くのに従ってつい視線が揺れてしまう。 「どうして王宮医に診せなかった?」 「え?」  よそ事を考えていた思考を慌てて引き戻すと、陛下は口を紅茶で湿らせているところだった。 「そうしていれば、せめて洗礼を受けることはできたろうに。いや、クラドも王籍から抜けるなんて馬鹿なことはしなかっただろう」 「それは……」  オレの思い込みと軽率な行動はしかたがないの一言でどうにか出来るものではなくて、責められるのは当然だと思う。  けれど、あの時はそれが最善だと思っていた。  クラドとかすが兄さんの仲にズルイやり方で割入ってしまったオレは、二人を悲しませることもヒロを諦めることもできなくて、ただ消えることだけが正しいことだって……  そうすればオレの大事な二人が傷つかないって信じていたから。 「そうせざるを得ない理由があったのか?」 「いえっただ、あの時はいっぱいいっぱいで……っ」  自分の思い込みだけで引き起こしてしまった騒動をうまく言葉にしようとしても形にならず、ただ「申し訳ありません」と小さく口にするのが精いっぱいだった。  項垂れてしまったオレに、陛下はそれ以上責める言葉も叱る言葉も投げかけず、ただ物思うように溜息を吐いて小さく尾を鳴らすだけだ。  ぱしぱしと尾の鳴る音は妙に居心地が悪くて、救いを求めるようにちらちらと窓の方へと視線を向ける。 「クラドの稽古はまだ続いているのか?」 「ええっと……」  遠すぎてよく見えないけれど、丘の上の二人は剣を振り回しているようには見えない。  やはり、稽古と言う名の水入らずの時間だったのかな?と思いながら、立ち上がって窓辺に近寄る。

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