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「ミロク様がまだ出産からお体が回復されていらっしゃらなかった際、発情期を迎えられました陛下からミロク様を庇った折に  」  淡々とした口調だったのが、そこで軽く戸惑ったようだった。 「  閣下を身籠りました」 「…………」 「本来ならば陛下のお手付きになった段階で相応の監視がつくのですが、極々私的な空間での出来事でしたし陛下が護衛騎士に手を付けることなどあり得ませんので、報告されることはなかったのです」 「そんな……それが原因で?」 「いえ、原因は私が秘密裏に産み、誰にも知らせずに育てようとしたからです」  ロニフから出た意外な言葉にひく と喉元が引き攣るような感覚を覚えて、干上がりそうになった喉に慌てて唾を押し込んで息を詰める。 「……どうして、ですか?」  オレが思い込んでいた時とは状況が全然違うのだろうけれど、ロニフもまた好意を抱いてはいけない相手を好きになってしまったからだろうか?ミロクとの間に挟まれて仕方がなかったのでは と思うと、つい「陛下のことが?」と言葉が漏れてしまった。    その言葉に、ロニフは軽く首を傾げた。 「いえ、そう言う感情を抱くことなど恐れ多いことにございます、理由 でございましたね」  ロニフは言葉を探し、上手く組み立てるためか視線を足元にやって逡巡して見せる。そうして考え込む姿が、やはりクラドと親子なのだと分からせて、ちょっと嬉しい気持ちに心が温かくなる。 「私の名は取り立てていただきました際に賜ったものでございます」  貴族や王族以外は名字を持たないこの国で、王族に仕える際にそれが必要になると言うのはさすがにわかることだった。  平民を登用する時に、現存する貴族家に養子に入るなりして姓を名乗れるようにすることは、ままある話なのは有名なために、おかしいところを見つけられず今度はオレが首を傾げる。 「名は、呼ぶ者がいてこそつける意味があるのです」 「  ?」 「名を呼ばれたことのない私には、姓どころか名もございませんでした」  その言葉が、昼間陛下から聞いたヒロの話と重なって…… 「そのような者が親だとして、王家の血を引く閣下の御迷惑にならないはずがないのです。多少、剣の腕が立とうとも家系を貴ぶ貴族達にとって、そんなものは   」  オレが今日、陛下に言われた言葉を、ロニフは今まで幾度となく言われ聞いてきたのだろうことを考えて、ヒロを抱く手に力が籠る。  それは、これからヒロが言われ続ける可能性のある言葉のだずだ。  オレが、逃げてしまったから…… 「それならば半端に王の子と名乗り出るよりは、一兵士の子として育った方が良いと言うものです。それに、もし万が一、子供の存在に気づかれたとしても、幸い狼獣人で黒髪黒目の閣下は一片とも陛下には似ておられなかったので、相手は行きずりの者と報告すれば済む話でした」 「でも そんな、隠しながらなんて絶対に無理です!」

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