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 腹だって大きくなるし、出産前後の体調の崩れは経験した自分自身が一番良くわかっているつもりだ。  ましてや、クラドがそうであったようにミロクの護衛騎士だったと言うのならば、日中の大半を共に過ごしていると言うことで…… 「ええ、おっしゃる通り隠し通すことはできませんでした。まだ幼かったクルオス王陛下に見つかってしまいまして」 「…………」 「さらにはミロク様には誤魔化しも効かず、自分がどれほど浅はかな考えで行動したのかを痛感するばかりでした……」  爪が当たったのか哺乳瓶のガラスがカツンと音を響かせる。 「ミロク様は、陛下には御子が大勢いらっしゃいますので一人増えようとも構わない と。けれど、幸いと思っていた私似と言う部分が今度は閣下の人生に影を落としました」  王の血を引いているのか、それとも引いていないのか、確かにクラドの外見から陛下の面影を見つけることはできない。  何かを物思うからか、ロニフの耳がひくりと動いてから表情以上に内心を訴えるようにぺたりと寝てしまった。 「せめて虎獣人ででもあれば、王弟と言う立場にいると言うのに冷遇されることもなかったでしょう。そのような境遇に追い込んでしまった私には、ことさら閣下の産みの親であるなどと図々しいことを言うことは許されないのです」 「それは  」  そのままオレの話だ。  貴族の貴ぶ血筋も、肩書きもなく、ましてやその出生を隠そうとしたためにヒロは……  こちらをじっと不思議そうに見上げてくるヒロは、これから成長するにつれてそう言ったことに傷つけられて行くのだろうか?  オレは、ヒロの親として……相応しくないんだろうか? 「御心配なさらなくとも、私とはるひ様の立場は同じではございませんよ」  下手な微笑みはぎこちなくて、ロニフなりにオレを慰めようとしているのだと思う。 「はるひ様には巫女様がいらっしゃいます、ヒロ様は神の似姿を持ってらっしゃいます、何よりはるひ様はヒロ様の未来を考えられて心を砕かれてらっしゃいます。私とは違います」 「……そんなことないですっ!ロニフ様がクラド様のことを考えたから」  クラドのためになると思って、その存在を隠したし、今度は母親であることも否定しようとする。  子供を思っての行動は、オレとなんら変わりない。  いや、この腕の中でにっこりと笑う頼りない存在を手放すことを少しでも考えてしまうと泣きそうになってしまうオレには、子供のためにと身を引くそんな強さは欠片もない。

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