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「いや、それよりもこれを城へ急ぎ届けてくれ。渡せばわかる」
そう言って胸元の飾りの内、紅玉に狼の模様の彫られたビーズを取り外して手渡す。
「承知いたしました」
リファーは素早い動きで傍に控えていた騎士にそれを伝えて手渡すと、困惑を隠せない表情で俺の方を振り返る。
その顔にはこの状況は何なのか、どう言うことなのか何か知らないかと尋ねかける感情が隠されており、俺は逡巡の後にそろりと口を開いた。
「緊急事態だ。油断せずに警備を強化しろ、二波の可能性がある」
自分が思っている以上に低い声が出たがそれが言外の言葉をリファーに伝えたらしい、厳めしい顔を更に緊張に強張らせて神妙に頷き返して部下に指示を飛ばす。
「…………ここに、ゴトゥスに参加した者はどれだけいる?」
「基本こちらは王族の近衛でまとめられておりますので、遠征に参加した者は多くはありません。武器はほぼ聖別されたものではありますが……」
そう言うリファーの表情は浮かない。
基本、近衛騎士は王の警護を担当するのだから、瘴気や魔物と言ったものとの乱戦なんてまず経験することはない立場の者達だ。
多くはない とやんわりと答えてはいるが、いないと見ていいだろう。
近衛に抜擢されるほどだ、腕は立つのだろうがそれと経験は別問題となる。
「そうか。俺の隊が来るまで堪えるんだ」
「承知いたしました」
すん と鼻を鳴らしながら辺りを見渡す。
浄化されたにしては薄まらない腐臭は……
「 ミロク様を狙いに来たか」
先程持たせたビーズは最大級の緊急を知らせるために使うもので、あれを見せれば城に残してきた隊が俺の本来の剣や魔人に対抗するための聖別された火薬などを持ってくるだろう。
風に乗ってやってくる嫌な気配に、唇を引き結んで空を仰ぎ見た。
◇ ◇ ◇
急な地下への階段を気を付けながらそろそろと降りると、先に避難していたらしい陛下とミロクがいて、こちらを見て肩をすくめてみせる。
「とんだ災難だったな。坊主もぐっすりの所を起こされたんだろ?」
昼間にさんざん抱っこで散歩に連れて行って貰ったためか、ヒロはミロクに声をかけられてご機嫌そうだ。
小さな……とは言っても、テリオドスでのオレの家よりも広い空間に、飾り気のない簡易的な家具が一式と隅に木箱が幾つか積み上げられている。
地下だけに窓がないせいで息苦しいかとも思ったけれど、広さがあるのと明るい壁紙とのお陰で圧迫感は少なかった。
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