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それは、どんな物事よりもオレの胸を抉る。
ヒロの手を自分から離しておいて……恋しいなんて言ったら、自分勝手すぎるんじゃないかって、思ってしまう。
次の国王に決まっているヒロはぞんざいに扱われることはないだろうけれど、それでもあの王宮で他の人間の思惑に翻弄されずに生きていくには幼すぎる。
オレにはかすが兄さんがいてくれたけれど、ヒロに兄弟はいない。
独りで、泣いてはいないかと思うも、手放したオレにそれを心配する資格があるのかわからなくて、無事に帰ることができたらその時にヒロの名前を口に乗せようと決めた。
それに、今口に出してしまうとクラドも悲しませてしまうだろうから。
父親であるクラドはここにいて……洗濯した服を見て、どう言う状況でここに来たのかを自分なりに理解した。
王宮の近衛騎士の服でもなく騎士団の遠征用の服ですらない、使い勝手を優先させたような冒険者向けのデザインを持つその旅装は、国に属すると示す特徴を一つも持っていなくて。
クラドがどう言う立場でここに向かい、オレを救出しようとしてくれたのかを推測することができた。
共に流れていた長剣には、いつも誇らしげにつけていた白い虎を象った青いカメオがついてはおらず、流されている間に千切れてしまったのだといいのだけれど……きっとそうではないんだろう。
魔人の襲撃があったのなら一級の厳戒態勢をとらなくてはならない、それはヒロやかすが兄さんそれからクルオス王陛下の身を守るってことで、それらを守るのにゴトゥスの英雄であるクラドが必要とされないはずがない。
だから、オレを追いかけてきてくれたのはクラドが、すべてを断ち切ってきてくれたのだとわかった。
生きているのか、死んでいるのか……いや、死んでいる可能性の高いオレを、すべてを捨てて探しに行くなんて……
「クラド様」
「ん?」と少しそっけないような返事は、オレの考えがまとまったのかと確認しているかのようだった。
「愛しています」
火の向こうにいるクラドにそう言ってにっこりとした笑顔を見せた。
真っ赤な顔で乾いた服を身に着けるクラドを見上げて、食べきらなかった分の肉を大きな葉に包んだ。
食事が終わってからクラドがここを出ると言い始めた時、オレはとっさに首を振って拒絶の意思を示してしまった。
なぜなら、ここの周辺は瘴気や魔物が立ち入ろうとすると塵になって消えてしまうからだ、それがどう言うカラクリなのかは知らなかったけれど、瘴気に追いかけられている内にここを見るけることができた。
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