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1.大晦(22)

 隆人の腕の中で、遥はいつの間にかうとうとしていたようだ。  目を開けたら正面に隆人の顔があり、驚いて跳ねおきた。隆人と頭がぶつかりそうになる。 「初度の年越しの儀で居眠りするとは、お前は本当に大物だな」  呆れはてたという口調にはうつむくしかなかった。 「まあ、これでちょうどいい時間になったはずだ」  隆人の手で絡まっている帯が除かれ、長着の腰紐がほどかれた。するりと足元に純白の絹が落ちる。隆人の手で足袋も脱がされた。隆人もまた自ら長着と足袋をその場で脱ぐと、二枚の長着を鳥籠の中に広げた。  遥は長着の上に隆人に向きあう形で座らされた。隆人がじっと見つめてくる。その目をしっかりと受けとめ、見かえす。隆人の手のひらが頬に触れた。温かい手だ。遥はそれにキスをした。  顎先を上げられ、ついばむような口づけを受けた。角度を変えながら、互いを引きよせあいながら、深く咥内を探る。隆人の肉厚な舌が遥の歯列の根元を撫で、口蓋をくすぐる。こんなところが感じるなんて、十ヶ月前の遥は知らなかった。 「遥……」  隆人にゆっくりと押し倒された。耳を(ねぶ)られて響く水音とともにもどかしいような快感が体に小さく熱を点す。首筋をきつく吸われては舌が撫でる。痛みと癒やしに中心が疼きだす。  え、と思った。  頭をもたげてきた遥の欲望の根元に違和感がある。さっきベルトは外したのに。 「お前が眠っている間にまた着けておいた。簡単に達せられては困る」  隆人が唇の片端を上げて笑っている。 「間遠になっていたから、用心だ」 「あー」 遥は片手で顔を覆った。 「定めに従うためなんだろう? わかってるよ」 「いい子だ」  遥はべえっと舌を突きだした。  隆人が笑顔のまま、遥の長襦袢の襟に手をかけ左右に開いた。胸がひやっとする。温度差ゆえか期待にか、遥の胸粒は尖っていた。その片方に唇を寄せた隆人がふうっと息を吹きかけた。それだけで遥は敷いた長着を乱した。尖りを隆人が口に含む。舌先で転がされ、しゃぶられては吸われる。それだけでも鋭い快楽が下腹を直撃するのに、もう片方を爪で弾かれては摘ままれる。 「あ、う、くっ、や、やだっ」 「嘘をつけ」  胸元を含んだまま隆人がしゃべると、ぞくぞくしてくる。 「好きだろう、ここを弄られるのが?」 「んっ、す、き、すきだっ」  遥の返答に隆人の責めが激しくなる。歯を当てられて噛まれ、指先で潰される。そのたびに生じる稲妻のような電撃が体を貫き、腰が跳ねる。開いた長襦袢の裾から覗く遥の雄は完全に立ちあがっているが、雫を垂らすまでには至っていない。ただ根元に巻かれたベルトの食い込みはきつくなっている。  もっとと体が求めている。ここはまだ快楽の入り口だ。もっと深い悦びがあることを遥は知っている。腰を浮かして、隆人に擦りつける。 「あっ、あ、ほし、い、たかひ、が、ほし」 「どこに欲しいんだ」 「し、しり、おくを、いじって」  顔を上げた隆人が抑えた笑いをこぼしている。 「前立腺か? 前はいいのか?」  遥は隆人をにらむ。 「りょ、両方、責められて、イきたくなってても、ちんぽはベルト、されてる、じゃん」  隆人が顔を歪め、ため息をついた。 「そこはペニスと言えと教えただろう」 「どう言ってもおな――」  同じと言おうとした口を塞がれた。舌を絡められ、注がれる唾液を飲みこむ。 「美しい顔とのギャップに興が醒めるから、何とかしろ」  のけぞらせた喉を舐めあげられ、遥の背が小さく浮く。 「もう、わ、かった、から、は、やく、早く、たかひと」 「しようのない奴め」  笑みを含んだ口調で言いつつ、隆人が離れた。目で追うとローションを手のひらに出している。遥は自ら膝を引きあげて脚を曲げ、奥の蕾をさらす。  両脚の間に戻ってきた隆人が唇で、遥のなめらかな腿の内側を舐めた。 「――っ」  思わず息を呑む。抗議しようとした遥の後ろに濡れた指が触れた。ローションを塗りつけ窄まりの襞を伸ばすように丸く撫でられる。 「ああ……あ、、あ、は……」  期待に遥の鼓動は高鳴っていた。息を吐いていつでも迎えいれられる用意をする。  つぷりと指先が滑りこんできた。反射的にきゅっと締めつけてしまったものの、遥のそこはすぐに侵入を許す。  長年竹刀や木刀を握ってきた隆人の指は節が太く、皮膚は硬く厚い。それを抜き差しされるだけで遥の肉の輪は反応し、白い双丘を振ってしまう。 「これだけで気持ちいいのか?」  目をつぶっていた遥に隆人が訊ねてくる。遥は目を開けた。熱く潤んでいるのは自分でもわかる。 「いい、よ。かんじる。でも、もっと、ほしい」  緩んだ唇に口づけが落とされた。 「今夜はいつになく素直だな」  目元にキスされたとき、二本目の指が挿入(はい)ってきた。 「あんっ」  胸が跳ね、内腿が緊張に強ばった。指は円を描くように蕾を開かせていく。その感覚にたまらず長着に爪を立てる。  隆人がもう一方の手で遥の腰紐をほどき、長襦袢の前を開いた。遥の胸から足の先までが灯火の下に晒される。緩めではあるが根元を押さえられている遥の中心はわずかに透明の雫を滲ませてきた。じくじくとした熱が下腹にくすぶる。

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