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1.大晦(27)

 飲みくだしてしまったらしい隆人が悪い笑みを浮かべていた。 「濃いな」  恥ずかしさに遥は思わず隆人を蹴った。 「行儀の悪い足だ」  足首を掴まれ、立ちあがる隆人に持ちあげられた。股間が大きく晒される。遥は布団の上で暴れる。 「やめろよっ、放せっ」  喉の奥で笑いながら隆人が、遥がうつ伏せになるように足首を放した。  遥は振りかえって隆人をにらむ。 「玩具(おもちゃ)か、俺は?」 「いいや。大切な凰だ」 「その割には雑な扱いだな」 「お前もそうだろう?」  隆人が額にキスをしてきた。 「口をすすがなくていいのか?」  遥の問いに隆人がにやりと笑った。 「お前の精には凰様の御力(みちから)が宿っている。粗末にはできない。安心しろ。口にキスはしないから」  遥は自分の顔がぼっと火を噴くほどに赤く染まったのを感じた。無理矢理隆人の体に取りすがり、唇を押しあて舌を差しこむ。かすかに苦みが残っていた。隆人が苦笑しながら、遥の頭を軽く叩いた。 「人が気を使ってやっているというのに」  つんと顔を背けた遥は自分の体の変化に気づいた。 「え?」  遂情してし五分ほどしか経っていない。隆人とじゃれてキスをしただけだ。それなのに、もう欲望が兆している。隆人も目を瞠った。 「若いな」 「何か俺、変みたいだ」 「もう一回、しておくか?」  体の芯からうずいて震えが止まらない遥は素直にうなずいた。  隆人が猛った遥のものを口に含み、根元に指を添えて追いあげにかかる。遥は隆人の髪に指を差しいれ、頭を振りながら昂りに耐え、呻く。腰から快楽が噴き上げ波となって髪から手の先、足の先まで押しよせ、遥の意識を押し流す。絶頂の瞬間、目の前はいつものような真っ白な輝きではなく、金色の光に満たされた。その余韻は体にも及んでいる。全身の力が抜けて心地よいのに、じりじりと体が炙られるようだ。  目を開ければ隆人が唇を拭っていた。少年のような仕草が愛しい。遥は重い両腕を隆人に伸ばす。隆人が抱きしめられに来てくれた。苦さを帯びる口づけをかわす。口蓋をくすぐりあい、舌を絡めて歯列をたどる。  無意識に遥は隆人に腰を擦りつけていた。 「遥?」  隆人も気がついた。遥はもう欲情していた。硬さを持ったそれは透明の雫を滲ませる。自嘲に頬が引きつった。 「やっぱり変だよ、俺。なんか、怖い」  達しても達しても隆人に触れれば、快楽が欲しくなる。  隆人が遥の髪を何度も撫でた。 「今夜は大晦だ。それだけお前の中の凰は俺を必要としているのだろう。何も悪いことはない。俺がお前を満たしてやる。俺を信じろ」 「うん、うん……」  隆人の肩に額をすりつける。 「あんたを信じる」 「こんなときまで『あんた』とは、お前らしい」  緊張をほぐすように隆人が笑った。遥はそれには何も言わずただ隆人を見つめ、唇を薄く開いてキスをねだった。深い口づけはまた遥のものをいっそう張りつめさせる。 「うつ伏せになれるか?」 「うん」  遥は布団に伏した。隆人の手が尻から背を撫であげた。 「覚悟はできたか、遥」  遥はごくりと唾液を飲みこみ、うなずいた。  これからが本番なのだ。儀式の要が待っている。  隆人の手がローションを手にした。そして遥の尻を開いてその粘着質の液を注ぐ。遥は半身を起こして手のひらを差しだした。 「何だ」  怪訝そうにする隆人にかまわず起きあがると、ローションを広げた両手で隆人の猛った楔を包みこみんだ。隆人がくっと息を詰めた。それを見て少し口元を緩めてから、遥は再びうつ伏せになる。  隆人の濡れた指が後孔に入りこんできた。深く息をしながら遥はそれを迎えいれる。既に何度かほぐされていた蕾がほころぶのは早く、すぐに二本目、三本目を飲みこんだ。 「うっ」  前立腺を撫でられて、体が跳ねた。三本で抜き差しされると必ずどの指かは当たる。刺激が前へ走り、先ほど精を放って散ったばかりの雄茎が次の開花のために頭をもたげてきた。  繰りかえされる快感に口が開いてしまい、敷布を力なく指で掻く。 「は、やく……」  それには答えはなく、代わりに遥の滾る欲望が濡れた手に包まれた。息を呑んで遥はのけぞった。ゆるゆると隆人が前も責めてくる。言葉にならない。後ろは三本の指が限界まで入ってはぎりぎりまで抜かれる。全身ががくがくと震えはじめて、ただ喘ぐことしかできない。  このまままでは隆人の思うままだ。何も考えられなくなって、すべてを隆人に委ねることになる。遥は必死に息を飲みくだして唇を舐めた。頬を敷布に押しつけ肩越しに振りかえる。 「た、か、ひと……」 「何だ、我が凰よ」  遥が深く息をすると、自分の背が大きく上下するのを感じた。 「凰と、鳳は、つがい、だ。お、れ、が飛ぶとき、お前も、飛んでくれ、わが、鳳」  遥の中の指が動きを止めた。 「承知した。飛ぶときはそなたとともに。我が愛しき凰」  遥は微笑むと両腕を重ねて頭の向こうへ置き、額を敷布につけて布団に膝を立てた。少しでも隆人が挿れやすい姿勢をとる。

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