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そんなこんなで、この物語が開かれていく訳だけど。小説にすると、少し違った視点から味わえる。
僕が知る限りでは、現代の文化とは素晴らしい産物を残したと思う。
BL小説の中で、お気に入りの作家さんの小説を持ってきたから、暫くは飽きないで済むだろう。
だから、ほら…。
ー…微かに、聞こえるだろう?
これから起きる物語の序章が…。
ゆっくりと、ネジを巻いている時計の音。
チクタクと…。
針が、秒を刻む。
これが、光皇城の踊り場にある古い時計。
そして…。
もう一つは。
古代書の中から、小さな音が鳴っているんだ。
母の本は、本当に、不思議な世界。
幼い頃から、ずっと、一緒だった僕が言うんだから、魅せてくれる世界観も素敵なんだろう。
繰り広げられるのは…。
何も、紅く、彩られた物語だけじゃない。
純粋な恋の物語も、其処に存在する。
少し、可笑しく、変わった、お話。
珍しく…。
本の住人とも言える“彼女”が、目を覚ましたようだ。
僕の事を『小嵐』と、呼ぶ、聖霊には似つかわしい女性なんだけど。
母みたいな匂いが、プンプンする。
最早、母を小さくしたら、こんな感じだろう。
甘い甘いトーンで歌うのが癖の、ちょっと変わった彼女。
古代書だけにしか居座り付かない聖霊でもなければ、聖獣でもない。
ちらりと、本に目を移せば、勝手に開かれていく。
ゆっくり…。
ゆっくり。
薇を巻く様に。
古代書のページは、新たな物語を綴る為に。
真っさらな紙が出てきた。
光の文字が、スラスラと、記されていく。
羅列を見ると、古代魔界語がぎっしり。
うわぁ!
嫌がらせにしか過ぎない言葉。
目覚めて、一発目が古代魔界語って。
鬼にも程がある。
これ、文章的にどうなのかな。
『おはよう、小嵐。今宵は、貴方の物語を開いていきましょう。そうすれば、次なる道も開かれるでしょう?腐男子!』
自他ともに認める腐男子だけども。
ソコは、褒めても良くない。
皆に、被害を及ばず菌は撒いていないし、両親には内緒だけど。多分、母には微かながらバレている気がする。
しかし、何も言わないあたり…。
バレていないのかも知れないと、心の中で独り言を言っている間に、僕は気付くべきだった。
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