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彼女が既に、時空魔術を使っていた事を。
そして、飛ばされた世界が僕にとっての始まりを綴る一節。
運が悪いんじゃなく、運が良いのかと、考えれば。
自分の世界に入っていた僕が悪い。
飛ばすんじゃなく、少し、空間を歪めてくれるだけで良かったかも。
まだ、道具を試していないんだ。
父に使う前に、従兄に試してからでも遅くないと、思うんだ。
時、既に、遅し…。
開かれたのだから、ゆっくりと、見なさい。
貴方を待ち焦がれている人が居るわ。
それからでも、父親を撲滅するのは遅くない。
小嵐…。
貴方、母親似の部分を上手く、隠しているつもり?
その…。
ズバ抜けた能力は、他の人が真似をしようとしても。
無理な話。
だって、天性的なものだから。
手で触れて、古代書の吐息すら解るなんて。
単なる変人よ…。
でも、生まれ持った滞在能力は、素晴らしい。
上手に、扱わないと、ただの宝の持ち腐れ。
私、貴方の能力を買っているの。
繊細溢れる感情豊かな表現力は、新たな物を作るのに相応しい。
光皇帝の血筋を引きながら、下界暮らしが長い小嵐だから、成せる事もある。
その才能を開花させてしまったのは、紛れもなく、貴方の母親だろう。
彼女もまた、有能な古代書使いの一人。
現代だったら、博士号を取り、名誉教授も夢じゃない実力の持ち主。
何で、遠慮して、今の地位に居るのかは…。
別の機会に、話すとしましょう。
さぁ、そっと。
触れてみて。
其処には、確かに、小嵐を待っている人物の文章が。
記されている。
心で、読めたのなら、合格。
次なる物語のページを開いてみましょう。
決して、現代では語れない愛だのに。
どうしても、焦らして、焦らされ。
甘酸っぱい恋とはいかないけど、綴られている。
可愛い刺繍が入ったブックカバーにしようかしら。
桜色というよりは、ラズベリーに近い色にして。
小嵐が好きなBL小説の登場人物が愛用している品に。
名前は、本名にするのが一番だけど。
小嵐自身、長い名前が嫌だから、敢えて下界で使っていた名を古代魔界語にしておこうと、思う。
指先で、光を操り、古代書に彼の名を記した。
これで…。
本と、貴方の契約は終わり。
後は…。
何時もみたく、小説に、綴りなさい。
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