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そう、囁くと。
彼はコクッと…。
頷いた。
時空の中で、意識を持ってかれる人が大概だけど。
意識ある人は、逆に珍しい。
故に、時空で酔う人が多い…。
ー…乗り物酔いの数倍いくらしい。
ジェットコースターをマッハの勢いの如く、急降下していく感じがたまらない吐き気を催す。
つまり、戻した人の汚物が、マッハで飛んでいく。
想像したら、気分悪くなった。
だったら、例えるなと、言われるかも知れないが、真実。
そういや…。
現代におけるやり方を、やらないのが、この子の特徴。
幼い頃から、知ってはいるけど。
のほほんと…。
自分のペースで、やっているのが印象的。
母親から受け継いだ本を、大切に扱ってくれるのは嬉しい限り。
色んな事に、興味を示してくれて、私としては喜びたい。
何たって。
この古代書は、ある神から代々引き継がれている。
だから、大切に扱われているのは有り難い。
そんな風に、古代書の文章達が囁いているのが聞こえる。
天界に…。
戻って来たのだから。
目覚めないと、勿体無い気がした。
小嵐は、父親を撲滅したいみたいだけど。
別に、物語を綴ってからでも遅くはない…。
見てみたいと思った。
見なければ、損な気がする。
これは、本をこよなく愛する青年の話。
本は本でも…。
BLだけど。
お願いだから、性描写の柔かめなページを開いて置いたまま作業をするのは止して。
私、たまに目を開いた時に映すの。
綺麗に纏められ、表現された文章を。
もう、モラルが無いんだから。
でも…。
彼が、憧れているのは、解る。
表現を勉強しているのも。
ー…だから。
チャンスじゃないかしら。
これを機に、学べる事を学んで欲しいわ。
それに…。
少しばかり、気紛れな女神のお遊びに付き合ってもらおうと、思った。
ちらりと、目を移せば、彼は不思議そうな表情をする。
寧ろ『この状況を、説明しろ』と、言った感じ。
敢えて無視していても障りは、無いだろう。
これは、茶飯事だ。
さぁさぁ、本格的に雨が降りだす前に。
物語の始まりを。
小嵐と、一緒に開きましょう。
開かれた本の中にある文字達が。
『待っていました』と、言わんばかりに光を放ち、ワルツを踊り出した。
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