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ー魔界・ブルブェニ城・執務室
「甥っ子が、叫んでいますよ」
椅子に座りながら、考え事をしていた精悍な顔付きをした男性は、本を見つめた。
パターンを変えたのかと思っていたが、どうやら間違いだったみたいだ。太古の昔は、本を使って色んな物を作っていたらしいが、今になって甦らすのはどうかと思った。
しかしながら、叔父の研究の手伝いと題して、ちゃっかり、自分の所に取り得ているあたりが彼女らしい。
『叫んでいるのは、解るわよ。きっと、分身作りがしたくて仕方ないのでしょう。ビアンは…』
「あれでも、魔界帝国を納めている魔王です。少しは、配慮して下さい。それより、例の“彼”間違いなく、アイツが探し求めている相手ですか?」
『間違いなく、当たっていますわ。じゃなきゃ、私、細工したりしませんわよ…』
「まぁ、古代書使いが現代に居るのも珍しいくらいですし。細工したとしても、不思議じゃない。それに加えて、ズバ抜けた能力を持っているなら…叔母が喰い付きたくなるのも解る。私も、彼の本来の能力とやらに興味があります。魔界で、発揮出来ますかね?アイツ、凄く楽しみにしているんですよ。幼い頃に、一度だけ見たという『小嵐 盈羅』に逢える事を。私の親友、マリヤは」
彼もまた、彼女からしたら甥っ子にあたる。
だが、問題は何時から親友に『マリヤ』と、呼ばせているのか解らない男性を想像した。今頃、優雅なバスタイムじゃないのかと思うくらい薔薇が飛んでいそうなイメージが出てきた。
あまり、言いたくないが彼は少し変わっているかも知れない。
それでも、小嵐の相手としては相応しい。
『何故か…。下界で暮らしていた頃より、此処の空気に馴染んでくれる気がしてきたわ。小嵐の母親には悪いけど、古代書使いの頂点を目指して欲しくなってきた。だから、ビアンとタッグを組んで欲しいわ…』
その…。
ビアンが問題じゃないのか。
今更ながら、突っ込みを入れたくない男性は黒い髪を掻き上げた。
不思議に思うのは、叔母が“小嵐”に拘る事。神なのは百も承知だが。
特に特徴的な部分を前に見たが、女顔以外は普通だ。
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