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【セトside】
こう言っては何だが、私は叔母の嗜好を理解している。
執務室で、仕事を終わらせて、一息吐いていたのは叔母からの連絡待ちだった。本来なら、愛する者の傍に居るのが普通なんだが。
ここ、最近…。
例の“彼”の存在が気になるのか、放ったらかし。
故に、私の事を忘れているんじゃないかと、思えてきた。
ー…ビアン。
魔王としての威厳は、前魔王の『リセル王』のお陰で。
助かっているが。
何処か、抜けている。
『嗜むのは大事ですわ。女神の好物くらい把握しておいて下さい。本当、セトは、堅物ですね。誰に、似たのかしら?』
「ご存知な癖して、意地が悪い…」
誰が予想する。
叔父の研究を手伝いながら、自分の『分身』を作って。
傍に居る女神が、古代神としての自分をモデルにした人物だと。
しかも、長らく寝ていた割には時差ボケが起きていないという素晴らしさ。
流石…。
時空に慣れているだけあり、朝飯前か。
『はぁぁ、セトの頭の固さといい、堅物さといい…。叔父の影響にしては、少し大きすぎますわ。一方の、ビアンは、言わずと知れるジェイドの馬鹿な部分を引き継いでしまったのよね』
「…そこは、否定しません」
『遺伝子組み換えと疑われても、文句は言えませんわ。馬鹿って言うのは、小嵐みたく明るく抜けている感じの子を表すのよ。ビアンみたいに、名誉賞がある人物が…馬鹿を引き継ぐのは如何なものかと思いますわ』
「叔母、軽く…彼を貶しているのは気のせいですか。私は、ビアン以外の馬鹿は見た事ありませんが…」
今、さらっと、毒を吐いた。
『馬鹿』と、発言したのは良いが。
生憎、私はビアン以外、知らない…。
古代書を使えるのだから、それなりに頭は良い筈だと思っている。マリヤのお想い人なのだから、それなりに秩序があるに違いない。
一体、何処に『馬鹿』要素が含まれているのか、不明だ。
『小嵐は、父親の遺伝を、ばっちり受け継いだ…お馬鹿ちゃんなのよ。特技としては、物作りなんだけど。他に関しては、とてもじゃないけど…褒められないわ』
居た。
ビアンと同じく、父親の遺伝を引き継いだ御子。
何か、逢うの楽しみになってきた。
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