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そんな事を言ったら、伯父に怒られてしまうな。 『ソナタに食べ物扱いをされたくない』と、嫌そうな声音で返ってきそうだ。 「古代書使いね。彼は、私の事を覚えていなくって、当然なのだが。記憶の中に埋め込みたくなる」 ワイングラスを持ち、私は小嵐 盈羅の事を考えていた。 彼の記憶の中には、マリヤという存在が居ない。それは、私だけが知っている事だから。 当然、叔母の助けが必要になる。 価値があるか、無いかを判断した上での結果が、今なのだから文句無しだ。 「素直に喜べないのは何故か。叔母の企みの中を泳いでいる気がしてきた。私は、叔母に用意された駒じゃないんだが」 あまり深い詮索をしていると、怒られてしまう。 古代書使いというなら、私は魔術使いと言った所だ。あらゆる魔術に関しての本は読み漁った。 お陰で、伯父みたく『歩く変態』とは呼ばれなくなったが、再従兄弟達は、私を奇妙な目で見る様になった。 「魔術の基本は、夜更けまで話せる」 是非、彼に聞かせてやりたい。 昔、セトにしようとしたら、総司令官に『貴様みたいな変人の話をセトに聞かせるな』と、怒られて以来、セトには聞かせていない。 流石、カギリ王を父親に持っているだけあり、迫力が違う。 そういや、セトと同じでフリアの血筋だったな。 「魔界帝国五大王族…。名前を上げたら、凄い事になる。有名なのは、ブルブェニとフリアだが、他の王族も中々のものだ」 滅多に、顔合わせをする機会がないだけで…。 逢ったら、火花散っていそうだ。 叔母は一番詳しいんだった。 王族の成り立ち、カルマも知っているぐらい歴代の中で優れている。 女神とは、嗜好が今一解らないけど。 彼女の場合は違う気がする。 私だけじゃなく、多分、周りもそう、思っている。 誰も口にしないのは…。 ー…暗黙の了解なのだろう。 でなければ、研究を手伝わせている理由が解らない。 ブルブェニ城の中、研究者で一杯だ。 何でも、古代書を使ってからの実験らしい。 提案したのが、彼女だから仕方ない。 古代書の使い方を一から学ぶ為に、下界で暮らしていた小嵐 盈羅を選んだのだから、必然だ。

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