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辺りにドス黒さが舞うものだから、家臣達はビビっていた。 それは、試験管持ちながら。 怪しい薬を調合していたら、誰だって恐怖に感じる。 『夫の体液を混ぜれば、出来上がり!』 恐ろしい言葉が聞こえてきたが、私は無視をした。 研究に必要不可欠な薬品は、揃っていた筈。なのに、彼女は、自分専用道具を持参していた。 今、思えば…。 『薬草を摘みに行かせていたわ…』 記憶に残る限り、私は彼女の黒さと、研究内容しか目に通していない。 「ねぇ、レレル」 『はい…』 「この文字さぁ、どうにかして動かしたいんだけど」 『それなら、命令してみれば…。私なら、そうする…』 少々、困った様子の彼は、一文字だけ動かない物を気にしていた。 頑固なのかと聞かれれば違う気がする。しかし、動かないのなら命令するしか無い。 何時も、文字が答えてくれるとは限らない。 その時は、主として命令してあげれば良いだけ。 「君も、小説の一部になって欲しい。これ、お願いじゃなく、命令ね」 小嵐の言葉に一文字は反応した。 やっと、他の文字達と一緒に並ぶ。 『彼も嬉しそうね…』 「そう」 ただ、恥ずかしがり屋さんだったのかも。 単独で動いたりする文字は時折、自我を持つ場合もあるから慎重に扱わなければいけない。 その分、要望を答えるのも、古代書使いの役目。 私の本体なんて…。 本を開きまくって、長い呪文を唱えていましたわ。 その光景がリアル過ぎて、一瞬、眉間に皺を寄せました。 宙に浮いた文字を、一つ一つ指で弾きながら、チェックしていましたわ。 あれは、誰かを殺す時にでも使う呪いなのかしら。 自棄に…。 古代魔界語がずらりと、息をしていました。 『私、女神だけど…。あんな、難しい古代魔界語の文字を沢山に操れませんわ。ああいうのは、ゲームの世界だけだと、思っていました…』 再び、小嵐には聞こえない声音で吐く。 実際、どんな時に使うのかを聞けなかった。 否、聞けない雰囲気を周りに漂わせていたが正解。 古代書の中で生きる様になって、百年。 下界に降りて、共に学んできたけど。 小嵐の脳内は腐で犯されていた。 私の中に流れてくるのは、生々しい性描写。

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