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第三章:お馬鹿なビアンとフリア

ー魔界・ブルブェニ城・玉座 闇夜に浮かぶ暁を眺める男性は、銀色の長い髪を靡かせながら小さな溜め息を吐いた。 ここ数日、現魔王である『ビアン』の様子が可笑しいのは愚か、夫である従弟の『セト』も何かを隠している様だ。 原因は言わずと知れる、只今、他の仕事で忙しく、逃亡している叔母が関係しているのだろう。 毎夜毎夜、ビアンは…。 バルコニーで何をしているのやら。 本人に言ってやりたいが、生憎、母親の用事で席を外している。 「頼むから、スケジュールを勝手に交換するな。セトに…全て任せようとしているだろう」 主が居ない玉座を軽く睨む。 ビアンの性格からして、彼との約束は全て、夫であるセトに任せようと考えているに違いない。 どう考えたって、俺との約束忘れていそう。 いや、忘れているだろうな…。 「そして、何より…叔母様の研究に携わっている事態が、悪意を感じてならない」 これは、今に始まった事ではないのを彼は知っていた。 嘗ては…。 全知全能を司っていたとされる天界創造神『クラエティア』を知っている女神だ。 何で、俺が知っているのかは“フリア”の歴史にも載っているからだ。 最初は、誰だって勉強する範囲で、魔界のメカニズムとかも含まれていて、調べる者も多いくらいだ。 「ー…絵巻き図あったら最高!叔母様の美しい姿とか載っていそうな気がしたけど、残念ながら載っていたのは“フリア”の血筋を引いている『ルフェリア王』だけだった」 ふっと、思い出したのは、以前、博物館で見た絵巻き図。 何処のかは解らないが…。 見やすくって。 綺麗な絵だなと、思ったら。 ー…男性は、描かれている女性を見て、噎せた。 長い黒髪に…。 血の色にも似た、紅い双眸。 『血薔薇姫』と言われていた“フリア”の家系の者。 『彼女は“ルフェリア王”。私達の伯父貴にあたる“カギリ王”も、よく知っている人物』 『叔母様は?叔母様は映ってないの?』 『残念ながら、叔母様は、五大王族の頂点に立つ“ブルブェニ”の血筋で…。“フリア”の歴史には軽くしか触れられていないの。ごめんね、セレ』 幼い頃に、母親に教えてもらって以来、顔を忘れた事が無かった彼。

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