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ふっと、何かを思い出したかの様に、ビアンは本棚から一冊の本を取った。 それは…。 天界の植物図鑑だった。 「“罪の花”…“罪の花”…」 今思えば、母親の書斎部屋に、天界の植物図鑑が、置かれてあるのは、幼き頃に、彼自身が置いたものじゃないだろうか。 少し、癖が付いた紙は…。 年期の入った感じを漂わせる。 この、質感と、本独特の匂いと、紙媒体にしか無い感触が良いんだよなぁ。 「学名で、調べた方が、早いかな。あ、だけど…レイナ様の言う『試験体』も、気になる」 「…微かに、仕事をサボろうと、していませんか?“罪の花”については、僕が、綺麗に調べるから、母様は、手を動かして下さい。第一『試験体』を、気にしてどうするんですか…」 「えぇぇ、ビアンは、気にならないの?『試験体』が、何なのか。レイナ様から、古代書の扱い方を、習ったのに」 「その、叔母様が、只今、留守の為…僕は、習いたくっても習えない物があるんです!それは『試験体』も、気になりますが、人とは限らないでしょう。動物かも知れないし、植物かも知れない。もしかしたら、喋る食虫植物かも!」 ちらりと、視線を図鑑に向けてきた母親に対し、ビアンは、サボろうとしているのを察したのか、椅子から立とうとしているリセルを、座らせた。 まったく…。 僕が、調べようとしている内容なのに。 「いや、ビアン…。食虫植物だけは『試験体』対象外だったと、思うな」 ー…それ。 父様の弟君に、喧嘩売っているんですか? よく、考えれば、魔界には魔界植物が存在する。 特徴として、言わずと、知れず、自我を持っており。独自に、進化とまではいかないが。 食虫植物と、あんまり変わらないと、思う、ビアン。 自生している分、自我はあっても『喋る』という行為をしないだけで、意思疎通は出来る。 現代で聞く、外来種はなく、在来種のみの植物。見た目は『グロい』と、言われているけど、薬にも使える優れモノ。 「でしたら、夢の蛇園に居る蛇かも…」 「…」 冗談で言ったのに、母様の顔色が変わった。 どれだけ、蛇ラブなんですか。 半分、呆れ顔のビアンは、母親の反応を見て…。 どうやって、機嫌を直そうか、考えていた。

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