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第6話《おまけ+》ウィルバート先生とドイツ語レッスン①

「HEY!ソーマ、ドイツ語のレッスンを始めるよ」 「いつもありがとうございます。大佐」 「お礼なんていいよ。こうして君と過ごせる時間が嬉しいんだ」 「大佐……」 「フフ、君は可愛いね。耳まで真っ赤♪」 「か、からかわないで下さいっ」 「本当の事を言ってるだけなんだけどな。やれやれ、ニホンの表現は難しいね。いつまでたっても慣れないよ」 「もう〜。早くレッスンしますよ」 「どちらが先生か分からないね。じゃあ、始めようか」 「よろしくお願いします」 「それでは私の後に付いてきて。発音練習だ」 「はい」 「Das ist mein Kugelschreiber」 「だす いすと まいん くーげるしゅらいばー」 「意味は?」 「これは私のボールペンです」 「よくできました」  ウィルバート先生に褒めて貰った。 「Das ist mein Vater」 「だす いすと まいん ばーたー」 「Das ist meine Mutter」 「だす いすと まいね むったー」 「意味は?」 「こちらは私の父です。こちらは私の母です」 「正解だ。すごいよ、ソーマ」  また先生に褒められた♪ 「Das ist die Liebe」 「だす いすと でぃ りーべ」 「意味は?」 「これは恋です」 「うん」  大佐の眼差しが穏やかに注がれているのは、俺の気のせい? 「Ich denke nur an dich.Ich könnte dich nicht mehr lieben. Ich bin in dich verliebt. Egal was kommt, ich werde dich nie verlassen. ……Ich liebe dich.」 「えっえっ」 「おや。リスニングは難しかったかな?じゃあ、少しゆっくり話すよ。私に付いてきて」  微かに吹いた吐息が耳朶をくすぐった。 「Ich denke nur an dich」 「いっひ でんけ ぬあ あん でぃひ」 「Ich könnte dich nicht mehr lieben」 「いっひ こんて でぃひ にひと めあ りーべん」 「Ich bin in dich verliebt」 「いっひ びん いん でぃひ ふぇありーぶと」 「Egal was kommt, ich werde dich nie verlassen」 「えがーる わす こむと いっひ うぇるで でぃひ にー ふぇあらっせん」 「Ich liebe dich」 「………」 「どうしたの?なぜ言ってくれないの?」  だって…… 「先生の言うこと事がきけない?」  だって…… 「君の事ばかり考えている。私はこれ以上ない程に君を愛している。君に夢中だ。何があっても君を離さないよ……」 「それって」 「うん……ニホン語訳だよ」  目が離せなくなる。恥ずかしいのに、でも……  深海を宿す藍の瞳が引き摺り込む。  海の奥、更に奥。  海底深く、深い藍色に囚われる。 「君は優秀だ。私が訳す前に意味が分かってしまったんだね。だから、何も言えなくなった」  こくり……  真っ赤な首を小さく振る事しかできない。 「でもね、先生に逆らうのはいけない事だよ。だから、私は君にお仕置きをしなければならない」 「俺は……」  ねぇ、先生 「悪い子なの?」 「そう。君は悪い子だ」  そんな……俺は大佐を困らせている。 「君といると私の心がざわめく。何も手に付かなくなる。君以外の事を考えられなくなる」 「大佐、俺っ」 「しっ。誰が喋っていいと言ったんだい」  でも…… 「でも俺も」  大佐の事を考えると…… 「言う事を聞かない唇は、こうして……」  チュ♥ 「私の唇で塞いでしまおう」  チュウー♥ 「……潤んだ目だ。そんな顔して、私を困らせて。もっとお仕置きが必要だね」 「たい…さっ」 「また勝手に喋る。一体幾つお仕置きしてほしいのかな」  そんなんじゃないのに。でも……  チュウー♥  あなたのお仕置きは甘くて、蕩けてしまう。  こんなの最初から分かってたんだ。  あなたは最初から、俺がこんなふうになる事。分かってて…… 「んふぅ」 「いいお顔になったね。Ich liebe dich」 「あふ」 「どうしたの?続けて。ドイツ語のレッスン中だよ。Ich liebe dich」 「……いっひ りーべ でぃひ」 「そう。この言葉は、その顔で言うんだよ。Ich liebe dich auch(イッヒ リーベ ディヒ アウフ)」  愛している。 「私もだよ」  ……チュ♥

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