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第26話

一旦、部屋に戻り、シャワーを浴び、私服に着替えて、俊也の部屋へ向かう為に廊下を歩く。 初めて、俊也の部屋に行く...。 なんだか、緊張するし、でも楽しみな感じもある。 「手ぶらで良かったかな、購買部でなんか買って来てたら良かったかな」 再び、購買部に行くのもなんだし、俺は少し肩を落とした。 俊也の部屋の扉の前で、一度、深呼吸してからノックした。 オシャレなセットアップを着た笑顔の俊也が出迎えてくれ、釣られて、俺も笑顔を返す。 「コピーの手伝い、お疲れさん、樹」 「ありがと...手ぶらでごめんね?」 不思議そうに俊也が俺を向く。 「手土産忘れました、て奴?アホか。変な気、遣うなよ」 俊也に爆笑され、 「なに飲む?ミネラルウォーター、コーヒー、オレンジにコーラ、あ、ミルクティー買い忘れてたな」 「ミルクティー?」 「好きなのかな、と思って」 「ああ、うん、でも、ジンジャーエールとミルクティーだったら、ミルクティーがいい、て感じだから...オレンジがいい」 「オッケ」 思わず、俊也の部屋を見渡した。 大きな本棚に本がひしめき合ってる。 「....凄い本だね」 「ん?これでもだいぶ、減らした方」 「へえ...」 ありがと、とオレンジジュースの入ったコップを受け取り口をつけた。 緊張して、喉が乾いてたから、グイグイ飲んだ。 「お代わり、自由にいいから」 俊也がオレンジジュースの大きな瓶をテーブルに置いた。 「ところで、見せたいもの、て?」 小首を傾げながらコップを持ち、尋ねると俊也が待ってました、とばかりに微笑んだ。 「じゃーん!これ」 俊也が差し出した書籍のタイトルを目で追うなり、 「え!これ、昨日、観た映画の!?」 「そ、原作。さっき、図書館で偶然見かけてさ。チラッと読んだんだけど、映画より奥が深いし、映画にないシーンもあったよ」 「読みたい!」 食い入る俺に、俊也は嬉しそうな笑顔を見せた。 「最初、樹に貸すな、読み終わったら教えて」 「いいの?」 「いいの。でも、ネタバレは禁止な」 「うん!」 たった本、一冊かもしれない。 だけど、俺と俊也の距離を急速に縮めてくれた。 愛しい時間が過ぎていく。

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