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その、不思議そうな顔。 父親について、知りたいのかしら? だけど、それは、貴女にとって、少し、辛い物語になるかも知れません。 まったく、アナタに似てしまったのか。 ねぇ…。 ー…メリーフィナ。 『ソナタの気持ちも、解るが、私が行かないで、誰が行く?』 そう言って、優しく…。 ー…微笑んで、行きました。 私の心の底から愛した夫は。 『…貴女の父親は、聖界きっての戦士。冷酷だの、非情などと言われているけど、立派な“魔族”だと、思います。彼ほど、誇り高き、人物は居ないでしょうね…』 だから、少しだけ、少しだけ、貴女の父親の話を語りましょう。 眠る前の、お伽噺を。 『レイナ…私が亡くなった時は』 『心得ています…』 『リンア、すまぬ。父は、ソナタが暮らしやすい世界を作るべく、戦って来る。母みたく、華麗で、美しく、そして…心清らかに、育て』 銀色の世界に咲く、ただ一つの華。 ー…リンア・セイントラ・アーゲ・リオトル。 もう、一つの名。 私から、ソナタに、捧げる名。 『●●●・カイン・アクア・リオール・ブェルブェニ』 それが、魔界で、生きていける時の名だと、忘れるな。 母の家系は、少し、特殊な家系だ。 ソナタが、大人になった時は、変わっているかも知れないが。 『ブェルブェニ』の血筋と『カイン』の血筋が混じっているのを、忘れるな。 因みに。 私の、本名は、母しか知らない。 『ー…王、そろそろ、お時間です』 次々と、浮かぶ、父親の姿が、鮮明に入ってくる。 これが『私の父様』。 何と、勇ましい姿なのだろうと、赤ん坊は、思った。 名に、相応しく、生きていきたい。 そんな事を、思いながら、母親が持つ、揺りかごの中で。 今宵の物語は、どんな話だろうと、考えながら、楽しみにしていた。 母親が話す物語は、素晴らしい物ばかり。 何時か、生まれてくるであろう御子にも…。 聞かせたい物だと思い、城に戻る道を、揺られて行った。

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