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私が、結婚を申し込んだ時、彼女は、ある悩みがあった。 娘であるリンアの事だ。 連れ子というリスクを背負いながら、再婚をするべきか。それとも、断るかのどちらかだった。 だが、私は、諦める訳にはいかなかった。 アイツの、妻を、貰い受けるという意味が、どれだけ重要視されるか、魔界貴族としては、知っておくべき範囲。 知識、名誉、勲位があろうと、手に入らない物と、手に入る物の価値は解る。 正直、結婚の件を、納得してくれるとは、思いもしなかった。 『娘が、十三祝いを迎えてから、契りの件は、考えてくれますか…。私は、これでも、未亡人ですから。再婚というのは、勇気がいる物だと、思っております』 条件を飲んだ時に、言われた言葉。 『再婚』という、言葉に、重荷があるのは解っていた。 勇気が、必要なのは、嫁ぐ自覚を持つ事であり、覚悟がいる。 ー…だけど。 同時に、受け入れる準備もしなければいけなかった。 連れ子である彼女が、魔界で、暮らすにあたり、一般常識や、マナーを覚えるには、時間が必要だった。 それは、娘にも言える事だ。魔界では、社交界もある。 レディーとしての嗜みは、勿論、上品さ、品格、纏っている雰囲気、魔界貴族の私の娘として、何れだけの知識を持っているかも、問われてくる中で、リンアは、正に、レディーとして相応しい女性だ。 それを、父親として誇りに思う。 ファーストレディー。 そんな言葉が、似合う。 『リンア、お約束事です。決して、敵意が無い者に、剣を振るってはいけません。術を使う時は、人が居ないかを、確認する事。そして…王族には王族の掟がある様に、父君の家系にも掟があります』 『魔界に居る者達の、掟でしょうか?貴族の中で、父様の家系は、最高峰と、聞いております。私も、娘として、恥じないレベルに、成長したく御座います。それに、此処に居れば、龍族の…ジュル…』 しかしながら、龍族の話になると、涎が…。  

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