50 / 59

7-6

敢えて、理由は、聞かないでおこうと考えていた彼は、女性を、傍観していた。 何というか、不思議な感じがしてならない雰囲気が、漂ってるのは、間違いではないだろう。彼女は、こう、告げた。 『ソナタ…私の夫の生まれ変わりで、間違っていないよな?匂いは、確かに当たっている。しかし、カインの家系…つまり、私の家系みたいな雰囲気をしている。アイツ…こんな儚げな顔をしていたか?』 最早、何処を突っ込もうと、初めて思った。 貴方の夫は、鏡としか会話しない人だ。 普段は、寡黙な感じの、チャラ男じゃないのか。 『あの時代は、月詠尊の思惑で、ディーラーアの被験者を、選んで、適合者を、発見しては、実験していたからな。娘は、ショックのあまり、顔を見ると、逆らえなかった。それは…父親ソックリな男性が現れたら、度肝を抜くだろう。例え、作り者だとしても…』 実に、悔しそうな表情で、女性は、語った。 記録によれば、幾年か前に、別の世界で、事件が起きている。 当時の首謀者は、夜の支配者『月詠尊』。天照大御神の第五子を巻き込んだとか。 それは、魔界すらも轟かす実験だった。 天照大御神の第五子は、水龍との間に出来た御子。 つまり、龍神の血を引いている。 一方、月詠尊が用意した人物。多分、被験者は、言わずと知れている。 カナシータは、半分朧気な記憶を辿る。 龍族の血を引いている者が、被験者になる事は、今の世界でも同じで、特に、童神は、適用された。 実験の材料とは、響きは良いが、実際は、エゲツない新開発の薬を打っては、適合者を探すおぞましい光景。 下界で、例えれば、薬漬けになった生きる屍状態。 それが…。 虐待となるから。 十五龍神は、龍神の血を引く、御子は、十三祝いを迎えるまでは、手元で育てると、掟を作ったのだ。 だが、問題は、そこじゃなかった。 目の前に居る、姫神の弟である光皇帝 霰月(こうおうてい あらつき)である。

ともだちにシェアしよう!