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虎鉄は小学生時代は小中高と野球部に所属した根っからの体育会系。片や千雪は静かに本を読んで静かに考え事をしているのが好きな文学系。真逆の二人だが、就学前から1番気の合う、幼馴染同士だ。  とくに虎徹は昔から身体の弱い千雪をこんなふうにべたべたと構い倒してきて、19歳になった今も一向にやめる気配がないようだ。 「虎鉄、髪の毛伸びたな。何この髪型? 読モ風? 色気づきやがって」  虎鉄のお洒落なツーブロックに整えられた黒髪は艶やかで、猫っ毛で色素の薄い髪を持つ千雪とは真逆でそれにも嫉妬してしまう。 「部活引退してからもう大分たつからな。結構伸びた。義姉さんが切ってくれるから髪型はお任せだ」  虎鉄は野球をしている間はずっと坊主に近い頭だった。キャプテンでキャッチャーという堅いポジションにもかかわらず、端整な顔立ちと面倒見の良くさりげなく優しいところに目を付けた女生徒からモテにモテていた。髪型に気を使うようになってからは容姿がさらに際立ち、上背もあり鍛え抜かれた恵まれた体格も相まって卒業前までに沢山の女子に告白されていたようだ。しかしいくら告白されても彼女を作ろうとしない。 「いいよな、お前はそういう髪型似合うから」 「千雪の髪こそ綺麗だ。染めてなくても日に透かすと金色にきらきらして、触り心地もいい」 「うわ、ぐしゃぐしゃにすんなよ」 「寝起きで乱れてたのを直してやったんだ」  大きな掌が再び千雪の頭の上にのせられ、それを振り払おうとする千雪との間でまるで猫の喧嘩のようなじゃれ合いが起こり、千雪はまたちょっとそわそわした気持ちになった。 (くっそ、また触ってくる)  高校を卒業したこの春から。こんなふうに戯れのようにじゃれついて幼馴染の男である千雪にちょっかいをかけてくることに遠慮が無くなったから質が悪い。

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