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昔から千雪が貧血で倒れたとみたら、隣のクラスの最後尾に並んでいてもすぐに感づいてヒーローよろしく駆けつけ、ふらふらする千雪を背負って保健室に運んでくれた。  雄々しく千雪を護る虎鉄の姿はまるで王子か騎士様、千雪を名前をもじって白雪姫なんてヤジってくるものもいたから、千雪は体調が戻って教室に帰るたび、気恥ずかしくて仕方なかった。  頻繁に女の子に間違えられた華奢だった幼い頃ならいざ知らず、今では背丈は虎鉄よりは一回り小さいが170は超えている。流石に「病弱な美少女」然とした幼い頃とはもう違う、いっぱしの男だと自分では思っている。  虎鉄もバイトに勉強に何かと忙しいのだから放っておいてくれと何度も言ったのだが、千雪の母からも頼まれているからとか何だかんだと理由をつけていつでも気がつけば傍にいる。  その上今みたいにまるで恋人同士のように今も隙あらば髪を撫ぜ唇を寄せてくるから、半分日本人出ない血の入った千雪より、よほど外国人のようなスキンシップの多さだと思う。 「そこに千雪の綺麗な唇があったら、触れたくなるのはしょうがないだろ?」 冗談なのか本気なのか判じがたい声色。千雪は直線的ですんなりした眉と同じ角度に猫のようにまん丸で西洋の血の色濃いヘーゼル色の大きな目を釣り上げた。 「なにいってんの? はっずい! 俺にばっか構ってないで、早く彼女作って幼馴染離れしろよ」  虎鉄が彼女を作る。内心そんなこと望んでいないのに、千雪はわざとそんな風に言って虎鉄の心を試すように突き放すと、日頃は陽の光が良く似合う虎鉄の精悍な顔立ちに少しだけ蔭がさした。

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