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「やり過ぎた……、千雪!?」    身をおこすと、誰より愛しい千雪は腕の中でくったりと白い首筋を大きく仰のかせ意識を失っていた。  虎鉄は慌ててずるずると自らを引き抜くと、赤く色づいた肉襞がきゅっと絡みついてくる。思わず呻きそうになるほどの心地よさだったが、一気に引き抜くと、手早くゴムを縛って何とかその刺激に絶えた。 「ごめんな。辛かったか?」  千雪に求められたからと言って、心地よさだけをあげられたとは思えない。泣いて縋ってくる千雪に夢中で欲望をぶつけてしまったのは明白だった。 (いや……。千雪はあれから吸血を我慢してたのに、俺が誘惑して欲しがるように仕向けた。千雪が求めてくれたなんて、俺にとって都合がいい解釈すぎだな)  受験前に千雪が一度、体調を整えるためにおずおずとすまなそうに吸血を頼んできた時、虎鉄はそれを口実に千雪が断れぬことを知っていて、初めて千雪の身体を奪った。  狡いと分かっていながらどうしても千雪を手に入れたくてたまらなかったのは、野球での推薦を蹴ってまで近隣にある千雪と同じ大学に進むと決めた虎鉄から逃れるように、虎鉄に内緒で海外の大学にも書類を送っていると分かった直後だったからだろう。  実際は千雪の父のマリウスが千雪を傍に置きたくて無理やり進めようとしていた話で千雪は乗る気ではなかったのだが、勘違いした虎鉄は焦りに焦って、千雪の身体を半ば無理やりに近く奪ってしまった。  それ以来何となく距離を置かれているのは分かっていたからこそ、その関係性を変えたいと入学を契機にあれこれとアプローチをし続けていたつもりだ。しかし虎鉄自身は当の昔から自分たちは恋人同士だと思い込んでいたのだが、千雪にとってはどうも違うようであると(認めたくはなかったが)すれ違いに気がつくばかりだった。  出来れば千雪の方から虎鉄に思いを伝えて欲しい。そう思って見たものの、そもそもシャイな性格の千雪が上手く思いを伝えてこられるはずもなく、それがどうにももどかしく。虎鉄自身ももう限界を迎えている自覚はあったのだ。 「お前、俺のこと絶対好きだろ? なのになんで忘れちまうんだよ?」    

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