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 吸血のタイミングでは情熱的に虎鉄への思いを口にしてくるのに、大体起きれば覚えていない。もしかしたら興奮から口走ったこと自体後悔して、告白全てを無かったことにしているのでは……と思い悩むことも多々あった。しかし千雪はそこまで器用な性格とも思えず、ただ悶々とする日々だけが続いていた。そう、小学生の時のあの日から。  涙が伝う目の端を親指の腹でぬぐってやると、まだ官能の熾火が残る赤い唇を力なく開き、声なく「はくっ」と喘ぐから色気滴るその仕草にまた兆してしまいそうになる。 (ほんと、こいつ。いつもはポメラニアンみたいにぎゃんぎゃん煩いのに、ぐったりしてると、死ぬほどエロい。目の毒すぎ。千雪、……やっぱり綺麗だな)  幼いころから見慣れたはずの幼馴染の姿だが、そのどこもかしこも純白の美貌は見飽きることはない。  喫茶店の片隅でマイカップ(虎鉄と色違いの白いタイガース柄)で珈琲を啜る何気ない横顔にすら見惚れるし、LINEで呼び出された後迎えに行けばいつでもその場の大体端っこの方の壁や柱に寄り掛かっていて、少しバツが悪そうな表情で俯いているのが、虎鉄に気がつくとはにかんだ笑顔を浮かべて小さく低めに手を上げるのを見るたび、柄にもなく胸の辺りがきゅっとなってしまう。 「久々すぎて、抑えが効かなくて、ごめんな」  先ほどの吸血で多分貧血は解消できたとは言え、その後かなり欲望のままに無体を強いてしまった自覚はある。触らずにいられぬほど愛らしいまだ薄紅色に染まったままの頬を摺り上げ、桜桃色の柔らかな唇に詫びるように口づけた。柔らかなそれに誘惑されながらも身を起こすと、未だ淫らに白い足を虎鉄に向かい開いたままだった千雪の体勢を整えてやる。  雲が動き翳ったり明るく照らされたりを繰り返す窓辺で、滑らかな千雪の身体は真珠のように円やかな光沢が目に眩しい。下生えは薄く金色で、向こうの血が混じりそれなりに長さはあるがほっそりとした千雪自身は同じ男が持つものにしては嫌に淫靡に目に映る。瞑目した表情は子どものころと変わらずに無垢で、額に張り付いた前髪をかき上げたらまた悩まし気な表情が浮かんだので、その無意識の媚態に喉をこくっと鳴らしてしまった。この身体の一部に自分の血が溶け込んでいると考えるだけで、ぞくっとする興奮が沸き起こる。  柔らかな白い太腿に日に焼けた自分の手をかけ掴み上げる刺激が視界に入り、また泥濘み緩んでいるはずの甘い身体にその身を推し進めてしまいそうな衝動にかられそうになる。 「はああああ。可愛い!! クソっ! だあああああ。我慢だ、我慢」      わしわしと頭を掻いて想いを振り切るように首を振る。いつまでも見つめて居たかったが、虎鉄は荒い息を整え、千雪の細い胴に逞しい腕を回して抱え込みながら布団にごろんと横になった。くったりとした身体は意識を手放しているのは明白で、虎鉄は汗にしっとりと濡れながらも彼特有の清潔感のある甘い香りの漂う千雪の首中で筋に唇を押しあてた。

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