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終・今すぐもう一回記憶喪失になってくれないだろうか※
無事、焔が記憶を取り戻してハッピーエンド……のはずだったのだが。
今すぐもう一回記憶喪失になってくれないだろうか。思わずそんなことを考えてしまう。
「……も、やだっ」
甲斐が自分の乳首を弄ると胸元にかけられたローションがぐちゅぐちゅと恥ずかしい音を立てる。ただ触れるより気持ちがいいけれど、時折手が滑って力強く抓ってしまって、甘い声が漏れる。
焔は向かい合ってただそれを見ている。
ペニスに触れることは許して貰えず、ただ焔に見せつけるように乳首を弄る。触れてないはずのペニスはしっかり勃起しているが、だからといってこれだけでイクことはできそうにない。
「すごい、ぬるぬるして真っ赤に勃起してる……乳首だけでイける?」
「むり……」
「じゃあお尻も弄っていいよ」
これは「弄っていいよ」じゃなくて「弄れ」という命令だ。ぼんやりした頭で焔に渡されたローションを手に纏わせると、指を挿入した。
「……あっ、んんっ」
「足もっと開いて、俺に見せて」
「ふぁっ、……うっ、…………」
どうして甲斐がこんな目に遭っているのかというと、これはお仕置なのだという。
あんまりだ。甲斐はただ焔とセックスしただけなのに、それが記憶喪失中だったから浮気のようなものだと責められているのだ。
片手で乳首を弄りながら、もう片方でアナルを弄る。焔は手を出そうとはせず、その代わり時折恥ずかしい言葉を投げかけてくる。
「ほむら、もう……むりっ、……イキたい…………」
自慰では射精できなくて、焔に縋る。
乳首もアナルも気持ちいいのに、足りない。焔の視線に興奮はするけれどだからといって決定的な刺激にはなりそうにないのだ。
「それじゃあお仕置にならないんだけど……」
「あっ、おねがい……入れて……っ」
「じゃあ、もっといやらしくおねだりできたらいいよ」
いやらしく?
どうすればいいのか考えるよりもはやく体が動く。
焔に見えやすいように両手でそこを広げる。期待にヒクヒクと収縮してしまうのが恥ずかしいけれど、よく見えるように足を開く。
「……焔のペニスで俺に種付けして、孕ませて…………焔の形になるまでいっぱい入れて」
「うん、いいよ」
それで、ようやく許されたのかと思ったのだが……。
「やっ、やだっ!とって!」
両腕に手錠をかけられ、ベッドに繋がれた。それだけでは飽き足らずペニスにはリングのようなものを嵌められた。
結局お仕置は続行中らしく、やっと挿入はしてもらえたけれど射精できない状況なのは変わらない。
「あっ、やっ……イキたいっ」
焔のペニスが深くまで突き刺さって、本当なら射精できそうなのに。ベッドに縫い付けるように上から体重をかけられて、容赦なく奥を暴かれる。
ゴリゴリと入ってはいけない所をこじ開けようとしてきて、目の前がチカチカしてくる。
「ひんっ、……やっ、むりっ……はいんない」
「入るよ」
当たり前みたいな声で言われると、入るというより入れるということなんだろうなと思った。
「子宮で出してあげないとね」
子宮なんてあるわけないし、孕むはずもないのに。いや、元々甲斐が言った言葉なのだが。
「……やっ、はいっちゃ…………だめ!やだっ」
「入れてって言ったのはそっちなのに」
そんな所に入るはずがないのに、ゆっくりゆっくりと中をこじ開けて、先端が入り込んでくる。
「あっあっ……やっ、だめぇっ…………」
怖いのに、入ってはいけないのに、体はそれを悦んでいて。自ら焔のペニスを受け入れていってしまう。
「あんっ、やっ、こわい……やだっ」
「……出すよ」
「ひっ、やっ、」
上から体重をかけて奥をズンズンと突かれて、逃げ場のない快楽に息ができない。
「――あ、あついの……でてる」
ドクドクと脈打ったものが体の中で弾ける。いつもよりずっと深いところに焔の精液が流れ込んでくる。
女じゃないのに、妊娠するんじゃないかと錯覚するくらい。
リングのせいで射精できないが体の中はひどく満たされていく。
「甲斐、愛してる」
出したばかりなのにまた突き上げられる。精液のせいで先程より滑りが良くなって結合部から恥ずかしい音が聞こえる。
「や、……もう、イキたいっ」
いいかげん出したいのにリングを外して貰えず、ただ気持ちいいところばかりを責められる。乳首を両手でぎゅっと摘みあげられて、過ぎた快楽に涙が零れる。
「焔、ほむらぁ……」
縋るように名前を呼ぶと「仕方ないなあ」とペニスに触れられる。やっと開放されるのかと安堵するが、リングはそのままで扱かれる。
「ひあっ、やっ、とって、……やだっ、イク!イクから!」
「いいよ、このまま出さずにイッて」
「やっ!やぁっ――ひぁああっ!!」
出口の無かったはずの快感がたしかにどこかへ飛んでいくようだった。
塞き止められたペニスからは何も出ていないのに、射精した後のような達成感があった。なのにまだ体の中にくすぶった快感がぐるぐると暴れ回っている。
出してこそいないが、たしかにイッたのに。まだイキ続けているような……。
「うん。出さずにイケたね」
「ぁ…………やんっ」
そんな、イキ続けている状態でまた動かれる。
「…………やっ、出したい……」
「俺がもう一回出したら取ってあげる」
「むりぃ……んぁっ」
たしかにその後リングを外して貰えたが、だからといって快楽責めの時間が終わるわけではなかった。
我慢させられ続けた甲斐のペニスはとろとろと精液を垂れ流して、バカになったみたいにずっと射精し続けた。それなのに焔はお構い無しで第三ラウンドを始めるのだから体力バカにもほどがある。
やっと解放された時には中に出されすぎて甲斐の腹がぽっこりと膨らんでしまっていた。
「あ、……んぁっ……掻き出すなっ」
「すごい……甲斐の中、俺の精液でドロドロだね」
中に出したものを掻き出してくれるのはいいけれど、いちいち煩いので黙って欲しい。じっくり見られながら掻き出され、後から後から溢れてくる。
「甲斐、愛してる…………俺だけの甲斐」
そう囁かれてキスされると、それまでの行為を許してしまいたくなるから不思議だ。
……結局、記憶があろうがなかろうが、焔は甲斐を好きで、甲斐もまた焔が好きなのだから。
「……俺も、愛してる」
重すぎる愛情表現には困るけれど、愛されて嬉しくない訳じゃない。
……正岡焔の隣は、黒川甲斐に決まっているのだ。たぶんこれからもずっと。
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