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不安定な紫藤

その晩、 紫藤はふらふらと病院からの帰り道に駅の裏通りのホテル街の方に向けて歩いていた。 その姿を佐渡が見つけ、ただならぬ雰囲気の紫藤に佐渡は不安を感じ、慌てて後をつけた 「紫藤?なんでこんないかがわしい通りに…」 様子を陰からうかがうと、初老の男と二、三会話をし、その男は紫藤に金を握らせ紫藤の肩を抱きホテルの入り口へと入っていった 「嘘だろ…」 佐渡はその場から動けれずホテルの入り口が見える近くの喫茶店で時間を潰した 2時間が経過し、やや疲れた表情の紫藤がひとりでホテルから出てきた すかさず佐渡は喫茶店から飛び出て紫藤の手を掴んだ 「紫藤っ」 驚いた顔をする紫藤は佐渡から視線をそらし 「見つかりましたか…」 力無くつぶやいた 「お前…何してた?」 「セックスですがそれが何か?」 「売りをしてるのか?」 「向こうが勝手に握らせてくるだけです。別に金に困っているわけではないので構わないでください」 「普通じゃないだろうそれ」 「男同士だからって気持ち悪い?」 「違う。そういうことは好きあってるもの同士がやるものだ。性別は問題じゃない」 「乙女ですか?あなたは」 紫藤はイライラとし、外した視線を佐渡に向け睨んだ 「何をイライラしてる」 「さっきのがハズレだっただけです!」 「ハズレってお前…」 「離して!満足しきれていないから腹が立つんです」 佐渡は紫藤の心の歪みを察し、紫藤を引っ張り歩き出した 「ちょっ!」 「来い。お前も治療が必要なようだ」 「治療って」 「俺が満足させてやる」 佐渡は引きずるようにして紫藤を歩かせ、自宅へと向かった ・ ・ 自宅へ着くと佐渡は紫藤の手を離した。 「逃げるなよ」 「ここまで来て逃げるわけありません」 佐渡は靴を脱ぎ、電気を点けてリビングへと向かった 「とりあえずソファに座れ。なんか飲むか?」 「いりません」 紫藤はリビングに上がったものソファに座らず落ち着きなく右手の肘を左手で掴み、はじめて入る佐渡のきちっとした様子の綺麗な部屋を見渡した 「めずらしいか?」 「いえ、片付いてますね」 「ものが無いだけだ。紫藤明日も仕事だよな?」 「ええ」 「じゃあ…手加減するか。こっちへ来い」 佐渡はリビング横の部屋へと入っていき、紫藤は無言で後ろに付いていった

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