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第10話

「幸永がいれば良い。幸永以外いらぬ」  静かに、熱くそう告げる清史は、しかし駄々をこねている子供のようにも見えた。元来、清史はあまり物事に関してグズグズと言う性格ではない。そんな彼がこうなっているのは、清史自身が理解しているからだ。政に身を置く東宮という位に、本来自由などないということを。  確かに皇族が多くの女御 更衣を召し抱えるのは子孫繁栄という意味もあるであろうが、それ以外に、貴族たちとの繋がりを持つためでもある。帝位に就くものは実際には孤独であろうが、表向きは孤独であってはならない。味方や後ろ盾がなければどれほど良い政策を考えようとそれは実行できず、結局は国も己の身も破滅してしまう。  皇族と貴族は、切っても切れぬ間柄なのだ。 「わかってるよ」  清史がどれほど自分を想ってくれているかなんて。これは自惚れではなく真実なのだと。  おそらくは荒れ狂っているのであろう彼の胸の内を悟って、幸永はゆっくりと清史の背に腕を回して撫でる。そして清史に断言するように、己に言い聞かせるように口を開いた。 「清史が俺をどう想ってるかは、わかってる。もう、疑ったりしない。何があっても」  含みのある言い方に清史は勢いよく顔を上げて幸永を見つめた。その優しい瞳に、幸永は微笑んでみせる。

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