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第12話
「俺たちが今を生きてるのはこの内裏で、清史は東宮で、俺は半陰陽の女御。この現実を覆すことなんてできないし、どんなに〝もしも〟の世界を空想したところでそれが現実に起こることなどあり得ない。なら、今の状況に対して考えを巡らせるべきだし、時には諦めや妥協も、必要だと思う。そんなこと、俺が言わなくったって清史はわかってるはずだ」
きっと清史はわかっている。だからこそ、幸永があえて言葉にする必要があった。彼はいつだって、幸永を優先させてしまうから。
彼は未来の帝だ。誰からも信頼され愛される、公明正大なる君主。それを幸永も、願っている。
「……まったく、これではどちらが東宮かわからぬな。幸永の方がよほどふさわしい」
自分でもどうしようもないことで駄々をこねるような真似をしているとわかっていたのだろう、どこか誤魔化すようにそんな軽口をたたく清史に、幸永はクスリと笑った。
「そんなわけないだろ。それに、俺は存外心が狭いんだ。嫉妬して暴れだしたら宥めるのはお前の役目なんだからな。覚悟しておけよ」
どれほど心が醜さで染まろうとも実際に醜態を晒すつもりは毛頭ないが、幸永はそんなことを言って清史を煽った。そんな幸永をグイッと抱き寄せ不敵な笑みを浮かべながら清史が幸永の艶やかな唇を舐めた。
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