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第14話

「清史」  伸ばされた手をしっかりと取り、清史は指先に口づけた。 「私の幸永……」  ゆっくりと床に倒れる幸永に、同じようにゆっくりと清史が覆いかぶさる。床に広がった髪を撫で梳きながら、その唇に口づけをした。  幾度も、幾度も啄むように口づける。段々と二人の呼吸が熱く、荒くなって、互いの唇から与えられる甘美な痺れに酔いしれた。  私の幸永。私の、幸永。そう刻み付けるように繰り返す清史に、幸永も口づけに応えながらその背に抱き着く。 「そう、お前だけの俺だ。そして……、お前も、俺だけの清史だ」  熱い吐息を零しながら言われた言葉に、清史の腰がグズリと重くなる。あぁ、本当に、どうしてこの子は――。 「そうだよ。幸永だけのものだ。私の瞳も、唇も、腕も、心も、この身のすべてが幸永だけのもの」  幸永以外の誰のモノにもならない。幸永だけだ。だからこの想いもすべて、幸永に受け取ってもらわないと困る。そんなことを呟いて、清史は口づけを繰り返しながら幸永の袴に手を伸ばした。胸元で結ばれた紐を引けば、シュルリと衣擦れの音を響かせながら解け、袴が緩む。白の単を左右にはだけさせて、現れた鎖骨に清史は顔を近づけ、柔らかな口づけを落とした。

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