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4章(15)
誕生日のディナーというと、大家族だった達也の家はカレーかハンバーグが定番で、主役がそのどちらかを選べるルールだったという。
達也は「オレはカレーが好きだった」とのこと。
大家族に限らずなのかもしれないが、達也の家のルールは聞いていると面白い。
カレーがいいという達也のリクエストと、柊一もまた尚紀が作るカレーを好んで食べてくれることもあって、当日のメインはカレーにすることにした。さらに、彼の好物で副菜も作ろうと考えた。
厚焼き卵、ポテトサラダ、大根と豚バラの煮物……。
みんなここ数ヶ月で覚えた柊一の好物だ。あとは、柊一はあまり好きではないのだが、彩りと栄養バランスを考えてグリーンサラダもメニューリストに加える。
「ナオキ、忘れないで! あと唐揚げも!」
当然のように達也が口をはさんでくる。
「それはタツヤの好物じゃん」
「シュウさんだって好きだよ。ナオキだって好きでしょ」
そう言われて考え直す。
確かにメインが大根と豚バラの煮物は地味すぎる。テンションが上がる華やかなおかずが必要だ。食べても食べてもお腹が空く達也や自分にはボリューム感のあるものが欠かせなくて、肉や魚の料理は必須だ。鶏の唐揚げは満足感もあって手頃でテンションも上がるなとメニューに加える。揚げ物をするなら冷凍ポテトも一緒に揚げよう。見た目がよくてボリュームも出る。
そんなことを考えながら尚紀がメニューリストと睨めっこをしていると、タツヤが笑う。
「それ、なんかもう、居酒屋のメニューみたいだよね」
達也は以前、両親の知り合いの居酒屋でバイトをしていたことがあるという。尚紀はバイトはもちろん行った経験もないのだが、そんな彼の提案で、居酒屋風の趣向にして、お酒も用意しようということになった。
「僕たちは飲めないけどね〜」
でも柊一が楽しんでくれたらそれが嬉しい。
「シュウさん、外に飲みにいくとか全然しないもんね。ずーっと仕事してる」
「少しでもそういう雰囲気を味わえたら楽しいかもね」
話題はメニューからバースデーパーティーの演出に変わっていく。
「じゃあ、オレは居酒屋みたいにメニュー作ろうかな〜」
「タツヤはイラストがうまいもんね。作ってよ」
そう言ってから尚紀はおもいつく。
「あとさ、シュウさんへのバースデーカードも作って!」
いいね! と達也も乗っかる。
「なんて書けばいい?」
「ハッピーバースデー! って。イラストがたくさん入った豪華なやつ。バースデー、綴り間違えないでね」
「もー。ナオキひどいよー」
「うふふー」
尚紀がそう笑うと、達也はもー、と目じりを下げて、唇を尖らせた。
自由になるお金が少ないため、プレゼントを用意することは難しいのだが、サプライズで心をこめて準備すれば喜んでくれるはず。
こんなにワクワクするのは久しぶりだった。
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