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4章(18)
食事を楽しんだあとは、柊一がインスタントコーヒーを淹れてくれて、冷蔵庫で冷やしてあったケーキに移行する。
「すごい……!」
達也の手作りだと言えば、柊一は目を丸くした。
そしてハッピーバースデーの曲とともに柊一がロウソクを吹き消し、達也がケーキをカットしてみると出てきたのはホットケーキ。
「わーお! すごいアイデア!」
柊一が喜んでくれるのが何よりだと思っていたので、尚紀と達也はふたたび目を合わせてにんまりとした。
しかも、ふんわりと仕上げたホットケーキを重ねたバースデーケーキは、冷えてもソフトで美味しく、柊一は年下二人のアイデアと行動力に終始驚いていた。
そして三人で美味しさを共有しながら、誕生日を祝ったのであった。
「オレから〜。誕生日おめでとう!」
そう言って達也が柊一に差し出したのは、白い洋風封筒。「シュウさんへ」と、達也の直筆の宛名が書かれている。
「え、僕に? ありがとう。なんだろう」
嬉しそうに柊一が受け取り、開けていいかと達也に問う。
中から出てきたのは、二つ折りの厚紙で。
それを開いてみて、柊一は歓声を上げた。
「わーお! 手作りのバースデーカードだ!」
縦に二つ折りのカードを開くと、手描きの大きな二段のバースデーケーキが飛び出す仕組みになっていた。
赤い苺と生クリームがたっぷりのって、ボリューミーで美味しそうなやつ。最初にケーキ屋で見て、高価で諦めたホールケーキのようなデザインだった。よほど悔しかったのだろうと尚紀は苦笑した。
そして、ケーキの周りには三人の男子と、可愛らしい動物も描かれている。三人は言うまでもなく、柊一と、達也と尚紀だろう。特徴がよく出ている。そして一緒に祝う動物たち。
みんなで柊一の誕生日を祝っている風景か。
「すごい、めっちゃクオリティ高いよ!」
達也は均一ショップでいろいろ材料を買い込んでいた。それがこのクオリティになるのだから、元々絵心があるのだろう。
尚紀も柊一の手元を覗き込んで驚く。
「すごいね! タツヤは絵の才能ありそう」
そうおだてると、彼は顔を赤くして、もういいじゃん! と可愛らしく照れた。
「サプライズはともかく、こうやって三人で誕生日を祝うの楽しいね」
尚紀の言葉に、達也も頷く。
「準備するのも楽しかった」
三人であまり外部とも接点がない生活を送っていると、このようなイベントは楽しくて刺激になる。
「二人は誕生日いつなの?」
柊一の問いかけに達也は、七月十九日、尚紀は三月二十日と答えた。
「すごい。三人とも、見事に季節が違う」
柊一が感想を漏らす。確かにその通りで、秋生まれの柊一、春生まれの尚紀、そして夏生まれの達也。
「ねえ、これは提案なんだけどさ」
柊一が、にやりと笑った。
「僕たちは他人だけど、もう肉親以上の身内とも言えると思うんだ。だから、これからは三人の誕生日はちゃんとお祝いしないかい?」
柊一の提案に、尚紀と達也も楽しくなり、即頷く。
「それ楽しいと思う」
「賛成だな」
次は三月の尚紀の誕生日だ。
「年に三回くらい、そういう楽しみがあってもいいじゃない、ねえ?」
柊一はそう言って、笑顔を見せた。
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