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7章(5)
美味しく楽しくワイワイとカレーと餃子を食べて、尚紀はコースの仕上げとして、買い出しの帰りがけに購入してきたホールケーキを取り出した。
例年、達也のバースデーケーキは尚紀のお手製だったが、今年はどうしても時間がなくて、近所のスーパーに併設されたケーキ店のショートケーキを買った。その店は一番最初に柊一の誕生日をサプライズで祝う際に、一度は検討してみたものの高額で買えなかったというあのケーキ。達也と尚紀にとっては、ある意味とても思い出深いものだ。
達也は苺たっぷりのケーキのデザインとパッケージから、そのことを覚えていた様子で、「あの時のケーキだ!」と、昔のように大はしゃぎした。
尚紀の意図に、達也も気づいた様子。
「ナオキ、これはこれでとっても嬉しい! あの時食べられなかったケーキがようやく七年の時を経て! そんなこともあるんだね」
「でしょー。僕も同じことを考えたの」
そう言って大きい蝋燭を二本と、小さいのを四本立てる。
ちなみに、達也と尚紀の誕生日には年齢の数だけ蝋燭を立てるのだが、柊一はそれを断固拒否している。僕なんて君たちのひと回り以上大人なんだから、放っておいて〜と半ば逃げ腰に言うのだ。
尚紀も達也もそれに関しては何も言わないが、二人にとって柊一の年齢は未だに謎だった。
ケーキの上の蝋燭に火を灯し、部屋の明かりを絞る。
「ハッピーバースデー、トゥーユー!!」
尚紀と柊一が声を揃えて歌い切ると、揺らぐあかりに浮かぶのは、大人びた達也の、照れた笑顔。大人になっても素の部分は変わらない。
その顔を見て、こうやって三人でバースデーを祝うのは、これからもずっとしていきたいなと、尚紀はそんな気持ちを新たにした。
「誕生日おめでとう〜!」
達也がふーっと息を吹きかけ、室内は暗闇に。そこにふわっと浮かんだのはスマホの明かりだった。
ブーブーとバイブ音が響いた。
尚紀が急いで室内の明かりをつけると、着信はダイニングテーブルに置かれた柊一のスマホ。
「シュウさん!」
近くにいた達也がそれを手にして柊一に渡す。柊一も発信者を見て、いきなりなんだろうと首を傾げた。
「もしもし?」
柊一が電話に出ている間に切り分けてしまおうと、尚紀は立ち上がる。
このケーキは、達也が以前イラストで描いたように、苺が沢山のっている。
「タツヤは苺がたくさんのってるところがいいよね〜」
尚紀がそう言うと、達也もわかってるじゃん! という上機嫌の答え。苺のケーキが好きな達也のために、時期的に少し値が張っても苺のショートケーキにして良かったと尚紀は思った。
「じゃあ、このへん切るよ」
「え!」
彼の了承を得て、包丁を入れようとしたところ、柊一の叫びの一言が聞こえた。
「それで……大丈夫なんですか?」
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