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8章(17)
信に言われた通り、横浜駅の改札を出て、コンコースに行ってみると、見覚えがある背が高くて華やかな雰囲気の男が立っていた。
一目でわかる。信だ。
背が高い彼は、街中の雑踏にいても埋もれない存在感がある。
「信さん!」
尚紀が呼びかけると、こちらを見ててを振ってきた。と同時に、周りで信を遠巻きに眺めていた人々が一斉にこちらを見る。
まさに有名人のオーラを醸している。
「おー、尚紀。ひさしぶりー」
尚紀はこの注目から早く逃れたくて、信に近づき、彼を周りの視線から庇う仕草をとっさにする。
あれ、信じゃない?
ナオキもいる……?
二人、知り合いなの?
耳に届く言葉を尚紀は気のせいだと思いたいが、そうではないのだろう。
「お前も人気だな……」
信の呟きが聞こえたが、尚紀はそれどころではない。注目を浴びせた上に、人探しなんて申し訳ない! と思ったが、一年以上ぶりに会った信は、そんなことは全く気にしていなくて。
人手が必要なことに変わりはなく、結局信に押し切られた。
「こういう時は人が多い方がいいだろ」
本当にそれは正論で。
信は本当に尚紀に会うために横浜までやってきていた様子だった。尚紀はそのまま、横浜に戻ってきたことと、信と一緒に探すことを伝えるために庄司に連絡を取る。
彼女は家の周りを探したようだったが、見つからなかったとのこと。すでにすっかり陽は落ちて暗く、気温も下がってきた。
尚紀はとりあえず、信と一緒にもう少し捜索範囲を広げると庄司に話し、彼女は警察に届けるために交番に向かうとのことで、手分けをすることにした。
探し始めて数時間。
すでに夜九時に近いが、柊一は見つからない。柊一の容貌や、外出時の想像できる服装などを信に伝えると、彼は眉をしかめた。
「結構な薄着だな。この寒さに耐えられるか? 普通なら寒くて寒くて、じきに帰ってくるんじゃないか?」
柊一は部屋着で出て行った様子で、このまま十二月に外の外気温に晒されていたら確実に体調を崩す。
普通の人間だったら耐えられないから、寒さを凌ぐ場所を探すとか、防寒をするとか対応策を講じると思うのだが、発情期の柊一にそれを期待するもの酷な気がした。そもそもそんな理性があったら、発情期に部屋を出る選択などしないはず。
「まじで。発情期なのかーー」
信が嘆く。なんでそんな時に出て行った、その疑問もごもっとも。
「たぶん、ちょっとメンタルがしんどい時期だから」
尚紀がそう言うと、じゃあ早く見つけてあげないとな、と二人で手分けをして自宅から捜索範囲を広げて探した。
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