81 / 159

8章(18)

 信と二人で探しても、柊一は見つからない。  日付が変わる頃になっても、柊一の行方は知れない。一体どこに行ってしまったのだろうと、気持ちばかりが焦る。  信も協力してくれているのに、なんで見つからないのだろう。   「巻き込んでごめん」  ずっと歩き回り人探しをしていて、くたくたになってしまった。尚紀は信と公園で落ち合い、成果を聞くが、信は首を横に振る。  本当にどこに行ってしまったのか。  少し休憩をしようと、尚紀は近くの自動販売機で信と自分のために温かい缶コーヒーを買った。  それを一缶信に渡す。 「お、サンキュー」  彼も寒くて喉が渇いていたのだろう。缶を何度かくるくると手のひらで回して暖を取ってから、ステイオンタブを開けると、ごくごくと飲んで、あったけーと呟いた。  少し落ち着いたのか、信が尚紀を見上げる。 「シュウさんだっけ。彼は尚紀のなんなの?」  家族、ってわけじゃないよね、と信が踏み込んでくる。そういえば、この複雑な関係性を信に話していなかったことに尚紀は気づく。 「シュウさんは……同じアルファの番なんだ」  すぐに信は飲み込めなかった様子で、沈黙が舞い降りる。 「……同じアルファ?」  反応が疑問形だった。 「うん。僕とシュウさんは同じアルファの番なんだ。番仲間っていうのかな……」  信は奇妙な表情を浮かべている。伝え方が悪かったかなと尚紀は心配になる。 「ちょっとまって。番ってのは普通一対一なんじゃないか」 「普通はね」  尚紀は苦笑した。 「僕はシュウさんの番に項を噛まれたんだ」  だから、シュウさんの番は僕の番、と自分でもびっくりするくらい軽く言葉が出た。 「………」  しかし、信は沈黙してしまった。  そんなことがあるのかよ、と呟く。 「だから、僕にとってはシュウさんは家族みたいなもので……」 「番は?」 「死んだ」 「じゃあ今は二人なのか」 「そう。番を亡くしても、僕たちは項の跡が消えなかったんだ」    信が衝撃を受けているのは分かった。  どう反応していいのか戸惑っているということも。 「洒落にならない話でごめんなさい」  いや、と信は首を横に振った。 「そんな深刻だと思わなくて……。いや、尚紀が置かれた状況がこんな……」 「……僕、最初の発情期で番に襲われて項を噛まれたんだ」 「………」 「こんな男の番にされるなんて……奈落の底に落ちた気がした。生きる気力もなかった。最初は。でも、同じアルファの番だったシュウさんがいてくれて、僕は少しずつ前を向けるようになった」

ともだちにシェアしよう!