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8章(18)
信と二人で探しても、柊一は見つからない。
日付が変わる頃になっても、柊一の行方は知れない。一体どこに行ってしまったのだろうと、気持ちばかりが焦る。
信も協力してくれているのに、なんで見つからないのだろう。
「巻き込んでごめん」
ずっと歩き回り人探しをしていて、くたくたになってしまった。尚紀は信と公園で落ち合い、成果を聞くが、信は首を横に振る。
本当にどこに行ってしまったのか。
少し休憩をしようと、尚紀は近くの自動販売機で信と自分のために温かい缶コーヒーを買った。
それを一缶信に渡す。
「お、サンキュー」
彼も寒くて喉が渇いていたのだろう。缶を何度かくるくると手のひらで回して暖を取ってから、ステイオンタブを開けると、ごくごくと飲んで、あったけーと呟いた。
少し落ち着いたのか、信が尚紀を見上げる。
「シュウさんだっけ。彼は尚紀のなんなの?」
家族、ってわけじゃないよね、と信が踏み込んでくる。そういえば、この複雑な関係性を信に話していなかったことに尚紀は気づく。
「シュウさんは……同じアルファの番なんだ」
すぐに信は飲み込めなかった様子で、沈黙が舞い降りる。
「……同じアルファ?」
反応が疑問形だった。
「うん。僕とシュウさんは同じアルファの番なんだ。番仲間っていうのかな……」
信は奇妙な表情を浮かべている。伝え方が悪かったかなと尚紀は心配になる。
「ちょっとまって。番ってのは普通一対一なんじゃないか」
「普通はね」
尚紀は苦笑した。
「僕はシュウさんの番に項を噛まれたんだ」
だから、シュウさんの番は僕の番、と自分でもびっくりするくらい軽く言葉が出た。
「………」
しかし、信は沈黙してしまった。
そんなことがあるのかよ、と呟く。
「だから、僕にとってはシュウさんは家族みたいなもので……」
「番は?」
「死んだ」
「じゃあ今は二人なのか」
「そう。番を亡くしても、僕たちは項の跡が消えなかったんだ」
信が衝撃を受けているのは分かった。
どう反応していいのか戸惑っているということも。
「洒落にならない話でごめんなさい」
いや、と信は首を横に振った。
「そんな深刻だと思わなくて……。いや、尚紀が置かれた状況がこんな……」
「……僕、最初の発情期で番に襲われて項を噛まれたんだ」
「………」
「こんな男の番にされるなんて……奈落の底に落ちた気がした。生きる気力もなかった。最初は。でも、同じアルファの番だったシュウさんがいてくれて、僕は少しずつ前を向けるようになった」
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