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11章(19)★
なんとも言えないふわふわとした感覚のなかで、目が覚めた。
熱い。身体が火照っている。
なんだか吐く息も熱を帯びている。
熱……?
そう、ふと思ってから、違うと尚紀は否定した。
「尚紀さん?」
尚紀の視界に入ってきたのは、白衣姿の颯真。
「そうま……せんせ」
そうか、ここは病院だ。
吐息を漏らすように、尚紀はビーズクッションにもたれかかったまま、颯真を呼んだ。
颯真は尚紀の手首を取って、脈拍を測っている様子。
「熱いね。今、症状きてるね」
そう言われて、頷いた。
ぼんやりとしていて、頭に靄がかかったようで上手く考えがまとまらない。
「今なら、まだ緊急抑制剤打てるよ。どうする? 打てば少し楽になると思うけど」
自分が選べるのか、と尚紀はぼんやりと思った。早く発情期を終わらせて、廉の元に帰りたい。
寂しいのだ。彼の元から離れて。数日間、ここで過ごすのが。
早く帰りたい。
薬を打てば楽になるのだろうけど、廉の元に帰るのが伸びるような気がした。少しでも早く発情期を終わらせて、夏木の熱を出し切って、廉の元に戻りたい。
普段は押さえつけて表に出さないよう制していた欲に、発情期の尚紀は強く支配されている感じがしていた。
「へいき……です。ぼく、がんばる」
尚紀はそう颯真に対して頷いた。
「少ししんどそうだから。体力を温存するためにも無理することないよ?」
そう言われたが、尚紀は首を横に振った。ふわふわとした感覚だが、颯真に向かって笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。でもだいじょぶ……」
早く帰りたい。
「そっか。じゃあ少し出した方がいいよ。一人でできる?」
そう言われて、尚紀は頷いた。
颯真はしんどかったらコールボタンを押してね、と言ってくれた。
颯真と看護師が出ていき、鍵がかけられる音をぼんやりと聞いた。
尚紀はそれからしばらくして、クッションに身を預けたまま、パジャマを脱ぎ始める。なにより、身体が熱かった。
上着のボタンを外して、下は脱いで下着も躊躇いなく取り去った。どこかすっきりした気分。やはり発情期は、いろいろな意味で開放的な気分になる。
そしてビーズクッションにもたれかかり、ぐずぐずになり始めている、自分の後蕾に指をのばす。即物的に手っ取り早く達して、欲を開放してしまいたい。快感やこのふわふわした発情期の感覚を楽しむつもりは全くない。
右中指を自分のお尻の奥に這わす。勢いのまま、その場所に指を埋め込むと、なんの抵抗もなくぐぐっと入った。すでにその場所は潤んでいて、自分の中指を難なく飲み込む。
しばらくその熱い場所をかき回したが、すぐに物足りなくなり、同じ場所に人差し指も挿れた。
「はぁ……」
少し刺激になって、期待で震えるフロントがびくんと硬く上向いた。
もう少し、な気がする。
やがて来るであろう絶頂を、経験と勘が伝えてくる。あとどのくらいの刺激を加えれば、達することができるか、なんとなくわかる。
やっぱり、自分と夏木の関係性では、彼の香りはあまりいらないみたいだとふと思った。
夏木の香り……いつも発情期は自分の理性をすすんで手放していた。理性的でいたら、夏木に抱かれるのが怖かったから。だから、あまり記憶にないのかなと思った。でも、これまで数回の発情期でもそんなことを考えたこともなかったから、問題ないだろう。
尚紀は奥を右手の二本の指でかき混ぜながら、楽な体勢であるビーズクッションに顔を当てて喘ぐ。たらりと、オメガ特有の粘質のある体液がその場所から溢れて脚を伝うのを感じる。
「あ……んっ!」
潤んで柔らかいその場所を尚紀は必死に掻き混ぜる。早く達したい。開放されたい。すっきりしたい。
……廉の元に帰りたい……!
室内は、尚紀のわずかな喘ぎ声と、粘質を感じる小さな水音が響いた。
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