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11章(22)★

 がんばったね、と颯真に労われ、その場所から指が抜かれた。身体が弛緩して、ビーズクッションにそのままもたれかかる。  バスタオルが外され、その場所を確認した看護師が颯真を呼ぶ。颯真が尚紀の下半身を覗き込んで、「もう一回やろうか」と言った。  まだ出し切れておらず、熱が残っているとのこと。  戸惑う尚紀をよそに、看護師が再び新しい薄膜を尚紀自身に被せた。 「もう一回やりますね〜」  そう軽く言われる。尚紀の重い身体は脱力してビーズクッションに沈み込む。  颯真はその身を起こし、うつ伏せから仰向けに体勢を変えた。背にビーズクッションを当てた状態で、全裸を颯真に晒すことになった。  なんか、もうここまで見られては感覚が麻痺して羞恥心も摩耗する。  タオルを掛けられたが、足を開かされその間に指が入ってくる。さっきとはまた違う刺激に尚紀は身悶えた。 「はぁ……ぁ」  先ほどとは異なる角度で挿入されたためか、新たな快感に尚紀は晒される。快感に囚われて身体が悶えてクッションから滑り落ちそうになる。颯真が、尚紀の足をさらに広げて身体を入れ込んできた。  なぜ、自分は今こんなところでこんな治療を受けているのだろう。ふと疑問が脳裏に差し込まれた。そして、脳裏に浮かぶ後ろ姿。  廉さん……。  何かが急激に落ち込みかけたが、颯真の優しい呼びかけで我に返る。 「なにも考えないで。快感だけに集中して」  その声で、廉の姿は尚紀の目の前から消えてしまい、寂寥感に襲われて視界が潤みかけたが、颯真がフロント部分を掴んで前後両方から攻め立て始め、再び快感に引き戻される。尚紀は、思考を手放し、中途半端に口を開いて呼吸を繰り返した。  射精が近づいてきたら教えて、と言われ、フロント部分にもしっかり刺激が加えられる。快感と息も吐けないしんどさがないまぜになって、尚紀は天を仰ぐ。  いつのまにか、乱れてタオルは取り払われていて、目を開くと、颯真に全裸を見られながら、刺激を加えられている光景を目の当たりにして、何かが弾けた。 「ふ……んっ」  おどろいて尚紀の腰も跳ねる。ぐんと、颯真の手の中のものが質量を増した気がした。腰が揺れる。快感の波をすごい速さで駆け上がった。  あん……いく、と尚紀が小さく呟くと、それを逃さなかった颯真は、じゃあいこうと再び尚紀のなかのデリケートな場所を容赦なく刺激した。 「ああ……! あん」  尚紀は思わず声をあげて、身体をしならせて、欲望を吐きだした。  大きな開放感に晒され、尚紀の身体が弛緩した。そして解放したその場所は搾り取ったように質量と形が戻り、くたりと尚紀の肌に寄り添った。 「よく、がんばった」  ラテックスグローブを外した颯真の暖かい手で頭を撫でられた。  今度こそ、終わりらしい。汗と欲望に塗れた身体は看護師が綺麗にしてくれた。  颯真は尚紀を診察する。 「二回はしんどいね」  そのように颯真に言われて、尚紀はぼんやりとしながらも頷いた。 「発情期になってからずっと出せなかったのと、快感が引き上げきれなかったから一回では難しかったかな」  颯真がそのように分析した。  尚紀はぐったりとしてしまい、呼吸を整える。 「……疲れました。なんかドキドキする……」  素直な本心。颯真は負担が大きかったね、と謝った。 「しんどい処置だけど、抜くと絶対的に楽になるから」と言った。  そうかもしれないと尚紀は感じた。あれだけ自分でできずに苦しんだのに、今は楽になり、燻るような行き詰まりを感じる気持ちも少し晴れていた。

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