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12章(3)

 尚紀の質問に、颯真はしっかり頷いた。 「できるようになるよ。フェロモンをきちんと抑えて、前の番の影響を抑えればいけると思う。そこを目指したいね。少し時間はかかると思うけど、がんばろうね」 「……どのくらい、かかるんですか」  尚紀の質問に、颯真は少し考える。 「うーん。そうだね。薬との相性を見ながら、効くものを選んでいく感じだからね。数ヶ月……目処としては半年以上はかかるかも」  その間は何度か発情期も来るし、必要であれば入院してもらおうかなと思っている、とのこと。 でもきっちり押さえられれば、ベータのカップルのようにフェロモンに影響されることはなくなるという。 「あぁ、検査結果上がってきたね」  颯真の言葉に、現実に引き戻される。  診察室に入る前に受けた検査数値が早速PCの端末に共有されたらしい。颯真がプリントアウトしてくれて、シートになって尚紀の前に提示される。  尚紀がそれを覗き込み、颯真が結果を一瞥する。 「本当に綺麗な数値だけど、やっぱりフェロモン値だね。うーん。  先週発情期が終わったとは思えない数値だね。今日から抑制剤を飲んでもらおうかな」  颯真がパチパチとキーボードを叩く。 「やっぱり、フェロモンは不安定だね。ちょっと強い薬でフェロモンを抑えようと思うんだけど、しばらくフェロモンの数値をこまめに見ていきたいんだけど、病院には来られるかな?」  颯真の言葉に尚紀は頷いた。 「わかりました」  これまでのように原因も対処法もわからないわけではない。この発情期が頻発する困った状況や最終的に廉とのスキンシップも増えるのであれば、試さない理由などない。  それに、颯真がいてくれれば、いずれ自分にもできるようになると思えた。  颯真が入力したものを出力し、尚紀に提示した。それは処方箋。 「今日の分はここで飲んでもらうことにして、これから数日間飲んでもらうお薬はちょっと強い抑制剤なんだ。もしかしたら副作用が出るかも」 「副作用?」 「うん。悪夢とか、多いんだよね」 「悪夢、ですか……」  副作用が夢とは。いまいちピンとこない。  颯真が苦笑する。 「えっとね、割合的には淫夢っていう、少しエッチな気分になる夢が多い」  その言葉に尚紀は驚く。 「エッチ?」 「そう。まあ普通に悪夢を見る人もいるし、もちろんそういう副作用がない人もいる。だるかったり、ぼんやりしたり、気分的に落ち込んだり……というのも副作用にあたるから、少し体調に敏感になってみてみてくれる?」  尚紀は頷いた。 「副作用がひどかったら次回教えてね。無理して飲み続ける必要はないから、薬を変えよう」  抑制剤というのは本当に効く人と効かない人がいて、フェロモンコントロール療法というのは、その人の体質にあった抑制剤を探すところから始まるのだという。  週の後半まで待てなかったら、連絡をくれれば予約を入れるから、と言われた。  尚紀もわかりましたと頷いた。  そして最後に意外なことを言われた。 「あと、次回なんだけどね。廉も一緒に連れてきてくれる?」

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