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閑話(51)
廉さんのことが好きです。
尚紀のストレートな告白に廉は舞い上がるような気持ちになった。本当は自分から気持ちを伝えたかったけど、告白するのとされるのでは、得られる喜びも違う。
俺も尚紀を愛していると、そう返そうとしたら、尚紀の表情が途端に曇った。
「でも、やっぱり僕は廉さんの相手として相応しくないです……」
尚紀は自分の気持ちにブレーキをかけている。好きだけど、自分は相応しくないと自分自身を否定している。
相応しいか相応しくないか、など、一体誰が決めるというのだ。
それでも、思わずなんで、と理由を求めてしまった廉に、尚紀は「貴方の番にはなれないから」と答えた。
廉は番という関係にこだわっていない。だけど、尚紀はそうではない。
今、尚紀が夏木真也に囚われているとしても、それは廉が愛する西尚紀を構成する一要素でしかないと思っている。
夏木真也が尚紀を番にした経緯は、たとえ推測だとしても、触れただけで筆舌にし難い怒りを覚えるが、それでもモデルのナオキを見出し、自分と繋がるきっかけを作ったのは、悔しさも感じるが尚紀の番だ。
廉はそれを含めて尚紀を愛しているのに。
しかし、尚紀はそうは思っていない。どうしたら、この気持ちが伝わるのだろう。
廉は立ち上がり、書斎から先ほど手元にやって来たブルーローズの花束を、尚紀に向けて差し出す。
「受け取ってほしい。どんな尚紀でも、俺は愛している。それは変わらない」
廉が、尚紀に渡したのは三輪のブルーローズとカスミソウの花束。気品がありながらも清らかな可憐さも持ち合わせた雰囲気だ。
ブルーローズの今の花言葉は「奇跡」。そして調べる中で、廉は、花言葉は贈る数にも意味があると知った。
「ブルーローズを三輪の花束にすると、花言葉が変わる。その意味はね、『愛する貴方に出会えたのは奇跡』というそうだ。俺の、正直で大切にしたい気持ちだ」
三輪というところにこだわった。二人が出会えたことに意味があったのだ。相応しい、相応しくないなど誰が決めるのだ。尚紀には自分にそんなふうに諦めてほしくないし、廉だって諦めるつもりはない。
二人の形など、今だって、これからだって変わっていくのだから。
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