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閑話(52)
「俺たちの再会は奇跡だった。まず、尚紀がモデルとして世間に顔を出していなければ巡り会えなかった。
俺が尚紀の先輩だったことも、尚紀が俺のことを好きだと言ってくれたことも、奇跡のような巡り合わせがあってこそだった」
尚紀に噛み跡があることは承知しているし、そんなことは関係ない。尚紀しかいないのだ、と廉は言葉を込める。
「俺は、尚紀の項に噛み跡があるのはもとより承知の上だ。そんなことは関係ない。尚紀がいいんだ」
しかし、尚紀の姿勢は頑なだ。
「廉さんはアルファなので、番は必要です」
アルファの廉には番となるオメガが必要だと言い張る。しかし、廉はそれは必須ではないと尚紀を説得する。
「俺自身は、番にこだわっていないんだ。尚紀と番えないのであれば、俺には番は必要ないと思っている」
その言葉に尚紀は解し難い表情を浮かべる。もっとシンプルに考えてほしいのに……。
「俺に必要なのは尚紀自身なんだ。俺と付き合ってくれないか?
……ベータの恋人みたいに」
ベータの人たちのように? と尚紀が目を丸くする。廉は頷く。
「ベータの人たちは番を持たない。だけど相手に惹かれ合って気持ちを通わせて、そして縁を繋ぐ。
俺たちもそれがいいと思うんだ」
いずれ、尚紀の項の噛み跡を消す方法が見つかったら、番うかを二人で考えよう、と廉は言った。
「廉さんは、僕が番うことができるようになるまで、待ってくれるというんですね」
廉は違うと即首を横に振る。
「いや、特に待つ気はない。
番関係になるかは、尚紀と一緒に人生を歩む中での選択肢の一つに過ぎない」
廉は尚紀の手をとる。嫌悪感はない様子。そして、そっと抱き寄せた。尚紀が少し身を固くしているのは分かる。
自分だってそうだ。尚紀の背中をとんとんと叩いた。そしてさする。
尚紀、俺たちは出会えたことに意味があるんだよ。
「廉さん……嬉しい。ありがとうございます」
そういう尚紀の声は少し潤んでいる。気持ちが伝わったことを理解した。
「僕は廉さんを愛しています」
廉が欲しかった、前向きなイエスの言葉。
「ようやく、欲しい尚紀の答えが聞けた」
廉は声を弾ませて、尚紀を再び抱きしめた。
【了】
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最後までお付き合いくださりありがとうございます。
お話はまた尚紀視点に戻りますが、少しお時間いただくかも…(同人誌の原稿を書いています)
次回はLOVE PRECIOUSかFORBIDDENのどちらの更新になるかわかりませんが(希望としてはFORBIDDENかな〜)、今しばらくお付き合いくださると嬉しいです。
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