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13章(6)

「尚紀さん、ちょっと辛いね。なかなかうまくいかないかな?」  特別室に入院して数日が経ったが、尚紀は気弱になっていた。そんなある日の午後のこと。  なかなか発情期がうまく進んでいないのは、欲をスムーズに発散できない自分にあると思った。颯真に迷惑をかけてしまっているような気がしている。 「ごめんなさい……」  尚紀は涙目になって謝った。  しかし、颯真は困ったような表情を見せた。 「違う違う。こちらこそ、しんどい思いをさせちゃってるね。抑制剤はもう少しで効くようになると思うから、もう少し我慢してね?」  尚紀は頷いた。颯真が投与する方法やタイミング、量などをいろいろと模索をしてくれていることはわかっていた。期待しても効かない、薬が効きにくいというのは、こんなに心身共にしんどいのだと改めて思っている。 「次の診察までにできれば発散して、すっきりしてから薬を入れよう」と言われていて、本来であればこのタイミングで緊急抑制剤を投与できるはずだったのに、どうしてもそれができなくて、尚紀は苦しんでいた。  ちょっと診せてね、と颯真がクッションにもたれる尚紀の背後に回り、下半身に手を伸ばす。クッションにもたれてタオルケットをかけているが、下は裸だ。 「そのままの体勢でいいから。楽にしてて。いいかい、少し触るね」  そう言って颯真が尚紀の敏感な場所に触れる。わかっていても驚いてしまう尚紀は、背筋がキュッとのびた。 「あ……」 「ちょっと不快だよね。でも、すぐに終わるから」  我慢して、と慰められて、尚紀は颯真の指を呼吸を浅くして受け入れる。指をお尻の指を入れられて素早く診られて、ものの数秒で抜かれた。  「きちんと出してから抑制剤を入れようかな」  颯真がそのように言って同行していたナースと視線を交わす。すると彼女は「失礼しますね〜」と言ってタオルケットを剥いて、剥き出しになった尚紀のフロント部分にゴムをするすると装着した。ゆるりと勃ちあがりつつある程度だが、器用に包まれてしまう。そして、バスタオルで下半身を覆い隠された。 「あ……」  作業として手慣れすぎていて、受ける尚紀の方が毎回衝撃を受けるのだが、最初の入院の時に比べれば、次に何がくるのか予測がつくし、これを乗り越えれば楽になるのも分かっているので、心の準備ができるようになった。 「準備できました」  ナースの報告で、颯真から少し触るねーと声をかけられて、温かい手が尚紀の背後からするすると入ってきて、デリケートな場所に触れる。 「あっ!」  これまで幾度となくされている処置なのだけど、こちらはなかなか慣れない。これまで廉にさえ見せたことはない場所を、ドクターといえど触られるのは、本能的に戸惑う。 「これが終わったらお薬入れるからね。少し楽になるといいなー」  颯真は優しく声をかけながら、入り込んでくる。  緊急抑制剤にはお尻に打つ注射剤と坐剤があるらしく、いろいろと試した結果、坐剤の方が反応がいいというところまで分かったらしい。  夏木のフェロモンを思い出せない、廉のことが過ぎってしまって発情期の欲を自分で発散しきれない尚紀は、身体に溜まった欲を人為的に吐き出してから抑制剤を投与されるという処置を、何度か受けていた。 「あ……っん」  切ない声色を上げると、颯真も辛いなぁと慰めてはくれるものの、手は緩めてくれない。颯真は尚紀の前後の敏感な部分を刺激を与えて、快感を引き出していく。腰が自然と快感を求めて揺れる。 「あっ……」  尚紀の声色が少し甘いものに変化し、更なる刺激を求めて大胆に腰が振れてくるのを察知して、颯真がスパートをかけてくる。 「あああーー!」  背筋がしなり、白濁が薄膜に吐き出され、勢いを失ったのを確認すると、颯真が素早く大きめの錠剤をその場所に挿入した。くりっと大きく硬いものが入ってくる感触に、身体が思わず驚く。少し我慢してね〜とあやされながらしばらくそのまま留め置いて、指が出ていった。  お尻の奥は違和感が残っている。 「はぁはぁ……」  息が上がる尚紀の頭を、手袋を脱いだ颯真の温かい手で撫でてくれる。 「えらいえらい、よくがんばったね」 「少し汗拭きますね」  ナースが薄膜を取り外し、デリケートな場所を丁寧に拭いてくれる。最初はそれも恥ずかしかったが、もう恥ずかしがる体力も羞恥心もすり減ってしまって、なされるがままだ。  発情期のため、人前で全裸になることや欲を発散することへの心理的なハードルは低くなっているが、ここではすべて見られてしまうから、長い期間いると人としての羞恥心が疲弊してしまう気がする。 「すみません……」  それでも手をかけられているのはわかるので思わず謝ると、大丈夫ですよ、と優しく言ってもらえた。

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