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15章(4)
尚紀には、前々回の入院時から、颯真が見つけ出した坐薬タイプの緊急抑制剤が投与されている。最初のうちは効果よりも副作用が強く出てしまっていたが、前回の発情期の入院でも引き続き投与され、根気強く副作用に付き合ってきたことで、ようやく身体にも抑制剤に馴染んできたらしく、一気に楽になった。
これまでの治療の甲斐があり、次回の発情期は楽に乗り越えられると颯真にも言われていた。
実際に颯真の予言通りだった。
つらかったのは初日だけだった。
颯真の確定診断を受けて、尚紀はそのまま特別室に入り、ベッドで休んでいるとしばらくして、発情の波がやってきた。
これまでも何度も経験してきた感覚。
身体がうずうずとして落ち着かない感じも、頭もぼんやりとして本能だけになっていく感覚にも覚えがある。それは、かつて夏木が健在で、順調に発情期がきていた頃と同じようだと思い出すような症状の出方で、落ち着いて迎えることができた。
「……ん」
尚紀はベッドに設置されているクッションに身を預け、仰向けに横たわる。身体がさわさわ、ぞわぞわしてきて……。尚紀は、自分で自分の身を抱きしめ、刺激を求めて腰を揺らした。
そう、発情期の感覚ってこんな感じだったかも、と思う。
この感覚は、本当に久しぶり。
そう思うだけで少し余裕を感じて、自分の発情期が正常なものに近づいているような気がした。
尚紀は視線をずらして、病衣の上着の紐を解く。その下は素肌。さわさわとコットンの感触が肌をさらい、それが感覚を敏感にさせていく。
気がつけば乳首が立っていた。そこに触れると、キュンと腰の奥が跳ねる感覚。
身体中が敏感になっているみたい……。
心配しなくていいから、自分が愛おしいと思う人を思い浮かべて、素直な発情期を過ごしてね、と颯真には言われていた。
愛おしい人……そんなのは明白だ。
尚紀は躊躇うことなく、その人の姿を思い浮かべ、名を呼ぶ。
「廉……さん」
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