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15章(6)
颯真の根気強いフェロモン療法によりコントロールされた発情期は三日ほどだった。
特別室に入って二日目の夕方には、室内に設置されているシャワーを初めて使うことができた。
体液や汗や香りをすべて洗い流して、すっきりしたところに颯真がやってきて、彼の診察を受けることになった。
指示された通り仰向けで膝を立てて脚を開いて受診態勢をとると、断りが入って尚紀のお尻の奥に颯真の指が入り込んでくる。
数日間いじっていた場所だが、ちょっと違和感があって探られている感じがする。
「うん。明日の朝には終わりそうな感じだね。今夜はここで過ごしてもらって、明日また診てから決めようね」
尚紀が頷くと、颯真は露出していた部分をバスタオルで覆ってくれて、頭を撫でてくれた。
「頑張ったね」
そう労ってくれたのが嬉しくて、笑みが溢れる。
「颯真先生が……根気よく治療してくださったからですよ」
そう言うと、颯真はくすりと笑う。
「頑張ったのは尚紀だ。俺はサポートしただけだからね」
ようやく訪れた、本来の発情期は穏やかな波だった。
「僕、おそらく初めてです。こんなに好きな人を想って発情期を過ごしたの。発情期って、幸せなものなんですね」
愛する人だけを想い、愛する人と過ごす時間。本来オメガが経験する発情期とはそのようなものであるのかもしれないが……。
初めての発情期で夏木の番にされた尚紀にとっては、そのような機会自体がこれまでなかった。
尚紀にとって、発情期とは最短で駆け抜けるべき時間だったのだ。
颯真は頷く。
「本来はオメガの人だけに与えられた、幸せな時間であるはずなんだ、発情期ってね。実感してもらえて良かった」
本来は、怖いものでも、憂鬱なものでも、つらいものでもないはずなのだと、颯真は言う。
「……そうなんだ……。そうませんせい……ありがとう」
「尚紀、本当にお疲れ様。少し休むといいよ」
颯真は尚紀が疲労で眠くなっていることに気がついていた。瞼が落ちそうになっている身体に、毛布をかけてくれた。
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