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15章(7)

 尚紀のこの夏に経験した発情期は、経過や規模は颯真が当初から想定していたものであったようだった。  退院時には尚紀を迎えに来た廉とともに診察室に呼ばれた。  ペア・ボンド療法のことかな、と尚紀は思ったが、そうではなかった。  廉と尚紀が患者用のチェアに腰掛けると、まずは颯真がお疲れ様と尚紀を労ってくれた。 「つらい治療をよく耐えたね」  そう言われて、半年前の自分を思い浮かべる。仕事が入っていたにも関わらず起きられなくなって、廉と庄司の手を借りてここにきて、颯真と再会した。  その時に不定期に襲われる発情期に耐えるしかなかったのだろうけど「よく頑張った」とねぎらってくれて、寄り添ってくれて、そして「よくなる」と言ってくれた。その言葉に仕草に、どんなに救われたか。  確かにこの半年間の治療は辛かった。何度も入院して、その度に体力を削られるような発情期を経験して、過去の自分にも向き合わないといけなくて……。そして、大切にしていた仕事も失った。体調で仕方がなかったとはいえ、やるせない気分になったのも確か。  しかし、その度にこの人は寄り添ってくれた。つらい時には必ずきてくれて楽にしてくれた。  信頼感しかなかったし、心の支えになっていた。  この人がきてくれれば大丈夫、と、そう思えた。 「颯真先生が辛抱強く治療してくださったおかげです」  初診の時にアルファ・オメガ科のドクターは患者さんと付き合いが長いという話を颯真から聞いていたが、尚紀は納得していた。  心身共にデリケートな部分を曝け出す診療科だ。発情期の時は自我だって怪しい。患者は、この人ならば、と全幅の信頼を寄せることができるドクターに自分を預けたいと思うだろう。  尚紀もこれから何かあったら、変わらず颯真を頼りたいと思う。こんなに親身になって寄り添ってくれるドクターとは出会えない気がする。 「これからもよろしくお願いします」  尚紀はそう言ったが、まだ治療は終わってないからね、と颯真に言われてしまう。 「え」 「覚えてない? 治療のゴールは?」  そう颯真に言われて、尚紀は思い出す。 「あ」 「そうだよ。ここで満足しないで」  尚紀は思わず廉を見てしまって、顔がかーっと熱くなった気がした。  颯真は楽しそうに、尚紀と廉を見た。 「じゃあ次の段階に進もうか」

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