258 / 263

15章(12)★

「その大きな目で見つめられると、ちょっと照れちゃうね」  廉は苦笑していた。  目は大丈夫? と問われて、尚紀は頷く。さっきまで泣いていた目の淵に、廉の指が添えられて涙の跡を拭ってくれた。 「泣いてる尚紀は可愛いけど、やっぱり笑っている方がいいな」  廉はそう言った。  一度くっついてしまうと離れがたくて、落ち着きを求めてソファーに移動する。並んでふわりと腰掛けて、尚紀は今度こそ躊躇うことなく廉にもたれた。  温かさと、心地よい香りに安心する。  ここにいていいのだと、自分が愛する人なのだと、自分を愛してくれる人なのだと思うと、少しこそばゆくて、自然と口元が緩む。  僕は本当に幸せ。  そう尚紀は実感した。 「尚紀?」  廉が注意を向けるように手をさすった。思わず我に返る。 「あ、ごめんなさい」 「いや、リラックスしてくれてて、嬉しいよ」 「……廉さんの中は暖かいです。香りも好き。なんか幸せな気分です」  そんな本心に、廉は、そうかと頷く。  そして。 「もう少し幸せな気分になる?」  そう問われて、不意に唇が近づいて重なる。先ほどとは違って、しっかりと重ね合わさった。 「ん……」  思わず尚紀は、吐息を漏らした。  憧れの廉さんとのキス……。それだけでも幸せだ。  廉が尚紀をさらに抱き包み、身体が密着する。  廉の香りも。  これまでいい香りだなと思ったことはあった。だけど、これまで廉はフェロモンを纏うことは少なく、その香りを堪能する機会は多くなかった。  しかし、今はその香りを、尚紀はじっくり堪能していた。  重ね合わせていた唇を廉が離した。それが離れがたくて、視線を離しがたく、尚紀は廉を見つめ続ける。   「廉さんの香り……好きです」  追いかけるように口をついて出る、素直な言葉。彼にぴったりのあったかかくて、優しい香り。ずっと一緒にいたい。 「尚紀にそう言ってもらえると……やっぱり俺たちは相性もいいんだろうな」  そう苦笑した。 「俺も尚紀の体温好き」  そう言って尚紀を抱き寄せる。そして、首筋にキスをして、くんくんと鼻をきかせる。 「幸せだ」  廉が尚紀の身体をさすった。彼に触れられている部分のすべて気持ちが良くて、尚紀はされるがままになる。外は残暑で汗が噴き出すような気候。だから、サマーニット一枚の薄着なのだ。 「もう少し進むよ」  そう言われた気がして、尚紀は頷いた。  そのニットの中に、廉の温かい手が入ってきて、尚紀の感覚は歓喜に震えた。

ともだちにシェアしよう!