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15章(12)★
「その大きな目で見つめられると、ちょっと照れちゃうね」
廉は苦笑していた。
目は大丈夫? と問われて、尚紀は頷く。さっきまで泣いていた目の淵に、廉の指が添えられて涙の跡を拭ってくれた。
「泣いてる尚紀は可愛いけど、やっぱり笑っている方がいいな」
廉はそう言った。
一度くっついてしまうと離れがたくて、落ち着きを求めてソファーに移動する。並んでふわりと腰掛けて、尚紀は今度こそ躊躇うことなく廉にもたれた。
温かさと、心地よい香りに安心する。
ここにいていいのだと、自分が愛する人なのだと、自分を愛してくれる人なのだと思うと、少しこそばゆくて、自然と口元が緩む。
僕は本当に幸せ。
そう尚紀は実感した。
「尚紀?」
廉が注意を向けるように手をさすった。思わず我に返る。
「あ、ごめんなさい」
「いや、リラックスしてくれてて、嬉しいよ」
「……廉さんの中は暖かいです。香りも好き。なんか幸せな気分です」
そんな本心に、廉は、そうかと頷く。
そして。
「もう少し幸せな気分になる?」
そう問われて、不意に唇が近づいて重なる。先ほどとは違って、しっかりと重ね合わさった。
「ん……」
思わず尚紀は、吐息を漏らした。
憧れの廉さんとのキス……。それだけでも幸せだ。
廉が尚紀をさらに抱き包み、身体が密着する。
廉の香りも。
これまでいい香りだなと思ったことはあった。だけど、これまで廉はフェロモンを纏うことは少なく、その香りを堪能する機会は多くなかった。
しかし、今はその香りを、尚紀はじっくり堪能していた。
重ね合わせていた唇を廉が離した。それが離れがたくて、視線を離しがたく、尚紀は廉を見つめ続ける。
「廉さんの香り……好きです」
追いかけるように口をついて出る、素直な言葉。彼にぴったりのあったかかくて、優しい香り。ずっと一緒にいたい。
「尚紀にそう言ってもらえると……やっぱり俺たちは相性もいいんだろうな」
そう苦笑した。
「俺も尚紀の体温好き」
そう言って尚紀を抱き寄せる。そして、首筋にキスをして、くんくんと鼻をきかせる。
「幸せだ」
廉が尚紀の身体をさすった。彼に触れられている部分のすべて気持ちが良くて、尚紀はされるがままになる。外は残暑で汗が噴き出すような気候。だから、サマーニット一枚の薄着なのだ。
「もう少し進むよ」
そう言われた気がして、尚紀は頷いた。
そのニットの中に、廉の温かい手が入ってきて、尚紀の感覚は歓喜に震えた。
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