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15章(16)★

 尚紀は白濁を放出した開放感で少しぼんやりとしていたが、先ほどまでの熱情がどこか落ち着いてしまったような雰囲気を感じた。それは、廉が尚紀の満足でこの行為を終わらせようとしていると直感した。  ……まだ、足りない。  オメガとしての本能が廉を欲している。 「あん……」  それをどうにかしたくて、尚紀は声をあげて廉に抱擁を求める。それに彼は嫌がることなく容易に叶えてくれた。 「尚紀?」 「いや……。れんさんも」  尚紀は廉の首筋に顔を埋め、彼の香りを堪能する。廉にもできれば自分で気持ち良くなってほしい。 「まだ……だめ」  尚紀の舌足らずな制止の言葉に、廉は笑みをこぼした。 「いいの? これ以上はさすがに止められなくなるよ」  尚紀は躊躇いなく頷く。 「いいです……大丈夫」  そして脚を絡ませ、腰を擦り付ける。それは想像以上に威力があったようで……。  廉の手が、そのまま尚紀の脚の奥に伸びてきた。 「もう……。ここで我慢と思ったんだが」  おそらくこれ以上は怖がらせたくないとか、身体を想ってのことだと思うが……だけど。 「僕は……廉さんが欲しい」  すると廉の指が、尚紀のその場所に辿り着き、つぷりと入り込んできた。 「あ……ん」  その衝撃で、尚紀から思わず甘い声が漏れた。    その後は廉に翻弄された。  欲望に塗れたフロント部分を咥えられて、脚を高く掲げられ、その奥の場所を指で広げられて、掻き回されて、快感と羞恥心で脚を閉じたくて思わず、股間に顔を埋める彼を両脚で挟んでしまって……。そうしたら、枕を腰に当てられて脚を自分の手で押さえるようにと言われてしまった。それは自らの脚を掲げ、廉を迎えるような体勢で……。  それはすごく恥ずかしいのだけど、廉は色っぽい、可愛い、そそられると情熱的に褒めてくれた。何度も何度も廉から可愛いと言われて……彼の好みに自分が適っていることが本当に嬉しい。  そして、ようやく。  指だけでなく、彼自身をその場所に埋めてくれた。 「ああっーー!」  尚紀の腰が跳ねた。正面から入り込んできた廉は、尚紀の細い脚を抱えるように押し入って来た。その衝撃に思わず尚紀は声が上がったが、ぐっと入って廉が顔を寄せて、尚紀の唇を塞いだ。  悲鳴を吸い取るような行為に、尚紀はどこか安堵して、すべてを委ねるように彼の腕を掴んだ。すると廉は手を重ねるように握り返し、腰を揺らした。   「ああ……ん」  最初の衝撃は過ぎ去り、尚紀の中で彼が馴染んでくると、ゆらりと腰を使い始める。  その優しい揺らぎに、口元が緩む。    今確実に自分と廉は繋がっていて、こんなに穏やかで優しい時間が流れていることに、溢れるような幸福感が湧いてきたのだ。 「尚紀が幸せそうだ」  その変化を廉も見やって、そう呟いた。 「はい……。幸せです……。廉さんと繋がってるんですね、僕。いま……」  そう呟くと、廉が尚紀の手を誘い、その場所に導く。脚を大きく開いたその奥に触れると、自分はしっかり廉を受け入れていた。 「尚紀の中、温かくて気持ちがいい。俺は尚紀とこういうことができて、俺は人生で今一番嬉しい」  そのストレートな言葉に尚紀も頷く。 「僕も、です」  自分は夏木真也の番だ。それは残念ながら今も変わらない。昨年のクリスマスイブに再会した時、廉が本能が求める本当の番だと察した。だけど、どんなに自分が望んでも、廉が望んでいたとしても、番にはなれないという絶望をあの時味わった。  運命的な再会だったけど番にはなれない。ならば知らなかった方が良かったとさえ思った。  だけど、運命的な巡り合わせを乗り越えて、今この人と身体を重ねることができている。  生きていて良かった。  絶望して諦めないで良かった。  今、人生の中で間違いなく一番幸せ。そして、それはこれからも続くのだ。  これまで発情期で抱かれている間は、意識が朦朧としていて記憶も曖昧だった。番に抱かれることは楽しいことでも気持ちがいいことでもなかったから、それで問題なかったし、その方が都合も良かった。  身体を重ねる行為は、こんなに幸せで、満ち足りた気持ちになるものだと初めて知った。  廉に全てを見せて身体を割り開くことも、快感に身を任せるもの恥ずかしいのだけど、彼はすべてを受け止めて許してくれる。  彼とはそういう関係なのだ。 「廉さん……嬉しい。廉さんとこういうことができて」  尚紀が声を潤ませると、彼は優しい瞳を尚紀に向けた。 「俺もだ。尚紀、俺を待っててくれてありがとう」  ここまでくるのに、いろいろと迷惑をかけたし、きっと廉自身も葛藤があっただろう。  だけど、そんなことを表にも出さずに、ありがとうと言ってくれるのだ。  視界が潤む。否応なく鼻がつんとしてくる。 「そんな大きな目で泣くと、目が溶けちゃうぞ」  廉はそう揶揄ったが、尚紀の涙は止まらない。  嗚咽が込み上げて、涙が頬を伝って肌に落ちる。  ぽろぽろ涙を流す尚紀を、廉は押し入ったまましばらく慰めた。

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