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16章(2)

 まだ残暑が厳しい時期。  なるべく日陰を選んで、涼しげな川沿いを楽しみながら辿り着いた図書館は、生き返るほどに涼しかった。汗がすーっと冷えて、心地よい。  とりあえず汗が引くまでと、入口のベンチで休み、水分を補給してすっきりしてから尚紀は入館する。  館内は静かで、心地よいオルゴールのクラシックが流れている。夏休みの時期なのだろうが、思ったほどに人は多くはない。ラッキーかもと思った。暑いから昼間は来ないのかもしれないと思った。  初めてなので、どこに何があるのかわからないので、館内案内で目星をつけて進む。  途中で貸し出しカウンターを見つけ、貸し出し規約に目を通す。まだ正式に引っ越してはいないのだけど、廉の住所を書けば……あるいは廉の名前を借りれば、自分も借りられるかなと思ったりした。  最近はアイウェアブランドの広告効果で、メガネを掛けている方がちらちら見られたりするので、手軽な変装ができない。結果素顔を晒して街を歩いているのだが、ここでも少し振り返られた気がした。それでも、有名人や著名人が多く住むエリアなのだろう。呼び止められたりすることはなかった。  このあたりも住みやすいなと思う。  そして無機質に並ぶ書架を眺めつつ、尚紀は淡い光が差し込むエリアにたどり着いた着いた。あたりは高層ビルも多いエリアなのだが、川沿いに建てられていることもあり、時間帯によってはまっすぐに陽の光が差し込むようだ。  大きな窓ガラスだが、白いカーテンに覆われており、熱と直射的な光が遮断されて、柔らかく心地よい空間になっている。  低い棚が多く、どこか優しい雰囲気が漂う。  児童書のコーナーだった。  そこだけふわふわの天然色のカーペット敷きになっていて、子供たちが靴を脱いで歩けるようになっている、プレイングスペースだ。  これならば転んでも怪我は避けられそう。  とはいえ、子供達もここで転げ回るような遊びをしている子はおらず、みんなカーペットに座ったり寝転がったりして、楽しそうに絵本を読んでいる。  可愛いなぁと尚紀も微笑ましく思った。  そこでふと、目に留まったのが、表紙を飾るように立て掛けてあった一冊の絵本。  そのイラストが記憶にあるタッチだったのだ。どこかで……それこそ子供の頃に読んだ作品だろうかと思ったが、いや違うなあと否定する。  やけに記憶を刺激するタッチのイラストで、三匹のうさぎのイラストが描かれた表紙だった。  近づいてみて、その絵本を手にする。  タイトルは「三びきのどうぶつのたんじょうび」。   三匹が並んで座るテーブルに置かれたのは、イチゴがたっぷりの不恰好なケーキ。そしてその上にはろうそく。  作者は「ひいらぎたつや」。  尚紀は驚いて息が止まった気がした。    タツヤ。  そうだ。絵本で読んだのではなく、紙で見ていたイラストのタッチ。タツヤお得意のバースデーカード……。 「ナオキ! ハッピーバースデー!」  そう笑顔で渡されたお手製カードのイラストだ。 「タツヤ……!」  尚紀の思いが言葉に溢れて出た。

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