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16章(6)

 基本的に廉は朝型で寝起きが良い。早朝に颯真の自宅に仕事で立ち寄ることも多いため、早起きが習慣らしい。  一方、尚紀は起きられないことも多く、廉を見送り損ねることもしばしば。そんな時は朝食が冷蔵庫に納められていたりする。  柊一と一緒に住み始めた時のように、彼が外に仕事にいくのだから、自分が家事をするべきだと思うが、廉から特段それを求められたことはない。彼は自分ができることは自分でする。  尚紀の出番はあまりない……。  自分の役割といえば、こんなふうに早く起きた時に彼を起こすことくらいだ。 「尚紀……」  ぎゅっと廉が尚紀を抱きしめた。  腰に手が回り、身体が密着する。さらに彼の香りが強まった気がした。 「朝ですよ」 「ん……」  廉が眠気まなこで頷く。これだけ強く抱きしめているにも関わらず、目の前に尚紀の姿を認めて安堵したようで、尚紀の胸に顔を埋めて深呼吸を数回繰り返す。 「おはよう……」  そしてさらに数回の深呼吸。  廉にとって尚紀の香りは気持ちが落ち着くらしい。颯真のフェロモン治療を重ねるに従い、それはますます魅惑的な香りになっていっていると話していた。夏木の影響が薄くなってきているのだろうか。  尚紀自身も少しずつ廉の香りを察知できるようになっているので、やはり治療の効果なのだろうと思う。  こうしてベッドのなかで温もりと香りを伝え合う時間が尚紀は好きだ。穏やかで安堵できる。このまま再び二人で寝入ってしまったり、少し話をしたり。どんなことをしていても、感覚を共有することでお互いの意識が混ざり合った感じがして、ますます愛おしくなる。    幸せ。 「今日は通院だよね。予約は午後だっけ」  尚紀を抱きしめたまま廉が口を開く。今日は土曜日だが、午後に診察予約が入っている。 「はい。颯真先生がいろいろ説明したいこともあるからと、午後三時の予約です」  廉にも来てほしいとあえてこの時間。廉はぐっと力をいれて、再度尚紀の体温を堪能した。尚紀はパジャマがはだけた廉の肌に顔が触れて、少しドキドキする。廉の鼓動にも触れ、そして香りが心地よい。 「あいつさぁ、本当にいつ休んでるんだろうな……」  廉が気にしているのは親友の激務ぶりのようだ。それに関しては尚紀も同意見で、いつも颯真は院内にいる感じがしている。 「入院している時は、いつもいらっしゃる感じがしています」  昼夜問わず。時には日曜日も。 「でも廉さんも同じような感じですよ」  尚紀はくすりと笑った。お仕事お疲れ様です、と今度は尚紀が廉の首筋に腕を回す。  んーっと二人で唇を重ねて、さらに舌を差し込まれて、尚紀の口腔内は廉に翻弄される。  キスって、気持ちがいいんだな……。  そんなことさえも、つい最近気がついた。 「今日は診察予約まで、デートしようか」  廉がそんなふうに提案してきた。 「いいですね! 廉さんとデート。嬉しいです」  尚紀は素直に喜びを口にした。

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